新NPPF(2018.7改定)について

「近隣−市町村−広域−サブリージョン−リージョン−国−超国家の間の、どこが何を決めるべきかというシステム調整・システム分担の方向を決める」ために、いろいろな動きが続いています。都市計画システムの基本政策に限ると、NPPF(National Planning Policy Framework)の改定版が2018.7に出されました。Brexitが「国−超国家の間」のリ・スケーリングをテーマにしているとすると、今回の協議は都市計画をめぐる「近隣−市町村−広域」のリ・スケーリングをテーマにしています。
前回記事(2018.7.2)の論点に沿って、結果的に新NPPFがどうなったか、それが意味するところは何かについて整理してみます。

ここでは、戦略計画とローカルポリシーの線引きについてみておきます。
3月の改定案では「最低限、各地方計画庁は管轄区域の戦略的プライオリティーを示したプランを用意しなければならない」としていた部分を「ディベロップメントプランには、各地方計画庁の管轄区域の開発・土地利用に関するプライオリティーを示す戦略的政策を含めなければならない」と修正しました。言っていることは大きくは違わないと言えなくもないのですが、主語が「地方計画庁」から「ディベロップメントプラン」になることによって、誰がそれをするかに関する締め付けのようなものがいくぶん和らぎ、各地域の状況に応じて柔軟にやってくださいね、という雰囲気が出たと思います。特に、協議案では「プランを用意しなければならない」となっていたので都市計画システムそのものの変更まで踏み込むのかと思われた部分も柔らかな表現になっています。
そのこととも関連しますが、RTPIの意見などが取り入れられて、「ローカルプランにローカルポリシーを含めても良い」の「ても良い」の部分は修正されました。ただし、「ローカルポリシー」という言葉は用いられなくなり、「非戦略事項」と表現されたうえ、その含め方は2通りあり、「戦略事項と非戦略事項を含むローカルプラン」か「非戦略事項だけ含む近隣計画」とクギを刺す感じの書き方となりました。

12月6日のパーカー教授の特別講演会では、2012年の最初のNPPFで強調されていた近隣計画の効能が新NPPFでかなりトーンダウンしているとの指摘がありました。これについては既に2018年3月の協議案の段階でそうなっており、かなりタガもはめられた形のまま新NPPFとなりました。

なお、2018.3協議案では「3.Plan-making」の章の最後に書かれていた「Assessing and examining plans」という部分が分解されつつ一部前方に移動しています。前方に移動したのは「Preparing and reviewing plans」という表現となっていて、プランのPDCAサイクルを意識させつつ、常にエビデンスにもとづく政策とすべきことや、マーケットのシグナルを考慮すべきことを強調しています。

都市計画システムそのものの変更を強めに言っておいて、各界の意見を聴取し、結果において、政府が問題と認識しているシステム上の調整を行った感じと読み取れます。