サウスバンク&ウォータールー近隣計画(ビジネス近隣計画)の投票が10月24日に行われます(ロンドンにおける近隣計画の最新動向(8))

ロンドンを訪れた人の多くが訪れる「サウスバンク」。ターミナル駅のある「ウォータールー」を含むこのエリアの活発かつユニークな都市計画の歴史は古く、一言では書ききれませんが、このエリアの近隣計画案への投票が2019年10月24日に予定されました。居住者の投票と、ビジネスセクタの投票の2つの投票があります。

その意義とポイントを短くまとめます。

 

第一。このエリアの都市計画の歴史は、本ブログ右帯「リンク集」下方にある「ダウンロードセンター」の下の方の『イギリス都市計画の新動向 新世紀へのチャレンジ』(2001.8)で。

第二。このエリアのエリアマネジメントの“元締め”「South Bank Employers’ Group(SBEG)」のサイトはこの名前で検索。上にある帯「OUR WORK」を見ると、いかに多くの業務をこなしているかがわかります。近隣計画の位置づけは、その中の「INFLUENCE」によく表れています。自らのミッションを実現するための「影響」の1つと捉えられています。

第三。他の「影響」4つをざっとみると、「Representation」は地域の声をロンドン市(議会)等で伝えたり政策に組み入れたりすること、「Business improvement district(BID)」はビジネスセクタから資金を集めて地域活性化に再投資すること(BIDエリアは近隣計画エリアのうちテムズ河寄りの文化機能やビジネス機能が集中する部分に設定)、「South Bank Forum」はこのエリアのガバメントに近い存在でさまざまな課題を報告したり議論する場。「South Bank Partnership」は行政担当者と議員とSBEGが地域のために調整したり各方面に働きかける役割。かなり徹底しています。

第四。このように、5つの「影響」のうち1つのツールとして近隣計画を活用しようとしているのがサウスバンク&ウォータールー。近隣計画の計画書を見ると(印象では)かなりあっさりしており、背後に控えるさまざまな「影響」の1つ(でしかないもの)として、ピンポイントで、法定の近隣計画というツールをうまく使って書き込んでおくべきことはシンプルに書いておく。そうすることで、他の「影響」もフルに発動して影響力を発揮する、との構造にみえます。

第五。そうした位置づけが近隣計画書によく表れているのがディベロッパーに向けて書かれた「ガイドライン」。近隣計画本体ではなく「付録」の1つとはいえ、こうした形で「この地域での開発のあり方」を示した例は(これまで見た中では)初めてです。

 

なお、メイフェア近隣計画の投票も翌週の10月31日に予定されています。ロンドンを代表するこれら2つの近隣計画により、「近隣計画」の意味(や限界)や活用方法の多くが読み取れそうです。

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)