『大災害の時代 未来の国難に備えて』

五百旗頭真著、毎日新聞出版、2016.6.30刊。

1995年の阪神・淡路大震災以降、日本列島は大震災の時代に入ったとの視点に立ち、「安定した認識の視座を得るには。三脚がほしい。少なくとも三つの主要なケースを視界に収め、全体的な認識を得る必要がある」(p9)との考えにもとづいて、関東大震災(特に火災と復興計画)、阪神・淡路大震災(特に倒壊)、東日本大震災(特に津波と原発)について、発災時の意思決定にはじまる公助の機動力を軸としつつ、地域での自助・共助の力がどれだけ発揮されながら総合力を発揮したか/しなかったか/課題および成果は何かを分析しています。大災害の危機管理においてたびたび専門家として指揮をとってきた貴重な経験が、その後の調査結果も交えながら客観的に記述されていきます。

 

「南海トラフ地震」による津波の地域ごとの予測高さが先日(1月24日)発表されました(⇒関連資料へ)。昨年の東日本豪雨のような災害のさ中に大地震がきたらどうなるのか(本書では関東大震災の「強風」が実は台風とかかわっていたことが書かれている)といった組み合わせのような発想を超えた「想定外」の事態も、もし現在が「大災害の時代」にあたるとすると、幾度もやってくるかもしれない(1月24日にはもう1つ発表があり(⇒関連資料へ)、各地の活断層型・トラフ型地震の発生確率の年度更新データが公表された。しかしこのデータには災害が短期間に集中する「大災害の時代」的観点は弱い)。終章に書かれた筆者の整理によれば、これまでに著しい地震発生期が、[1]貞観期863-887年(24年間)三陸地震津波、南海トラフ地震津波、富士山噴火、内陸地震、[2]慶長期1586-1611(25年間)南海トラフ地震津波、三陸地震津波、内陸地震、[3]元禄・宝永期1700-1715(15年間)相模トラフ地震、南海トラフ地震津波、富士山噴火、[4]安政期1854-1859(5年間)南海トラフ地震、江戸直下地震、巨大台風、の4回あり、1995年以降は5番目にあたると位置づけています。

 

[関連資料] 2020年1月24日の地震調査研究推進本部発表資料

・南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価

https://www.jishin.go.jp/evaluation/tsunami_evaluation/#nankai_t

・長期評価による地震発生確率値の更新について

https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/chousa_20jan_kakuritsu_index/

 

[関連記事]

・『災害復興の日本史』

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/20130312/1363075438