街の「幸福度」と、「住み続けたい」「誇りがある」「愛着がある」「住みごこち」「住みたい」との関係

横浜駅で購入した日経新聞をぺらぺらめくっていると、「住み続けたい街 葉山1位」という、そう大きくはない記事があまり目立たない位置に出ていました。神奈川県内自治体に注目して<首都圏版>全体から抜き取った形で、トーンとしては、首都圏の中で上位4自治体を神奈川県勢で占めている(葉山/逗子/鎌倉/横浜市西区)のだということを強調したものとなっています。表には、「住み続けたい街」と並んで「街の幸福度」の上位勢が5位まで示されていますが、こちらは神奈川県勢は2位の横浜市都筑区だけ。

 

これはおもしろいかもしれないと、出典をあたってみると、昨日9月8日にリリースされた記事が首都圏全体、神奈川県だけ版、東京都だけ版などとていねいに並んでおり、日経新聞記事はこれらの資料を使って神奈川県の読者向けに解説したものであることがわかりました。大東建託によるこの調査の特徴を、自らの言葉で引用すると、

「大東建託株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小林克満)は、過去最大級の居住満足度調査を行い、「いい部屋ネット 街の幸福度ランキング2021<首都圏版>」「いい部屋ネット 住み続けたい街ランキング2021<首都圏版>」として集計しました。」

確かに調査規模は大きく、調査方法が示されており、ある程度の精度もありそうだと、以下にこの調査の意義について書いてみます。(調査方法は独特なものなので、よく読む必要がある。)

 

第一。どの集計単位も、「街の幸福度」がメインにリスト化されていることから、おそらくこの調査では、街の良し悪しというかまちづくり(ひいては政府の目標)が目指す方向は「街に住んでいて幸福を感じる」ことであるととらえ、まずその度合いがどうなっているかを調べようとしている。

第二。それに付随して「住み続けたい」「誇りがある」「愛着がある」「住みごこち」「住みたい」といった少しずつ切り口の異なる価値についても調べ、それぞれが意味ある軸として、たとえば冒頭の日経神奈川版のように「住み続けたい」に注目するとそれ自体が意味ある結果となるように調査されている。そのほかにも、「誇りがある」というのは文化(資源の豊かさ)と相関が強いとかつてから言われていた(⇒関連記事)のを反映した結果なども読み取れそうで、それぞれ興味深い。

第三。このように、新聞記事ではそれが取り上げられる地域の文脈や会社の方針などによりこの調査の「ある断片」が取り上げられていて、その文脈にはまって読むとそれなりに面白い記事になっている(と思われる)。

第四。しかし、第二の点で少し書きかけたように、実は、「街の幸福度」が「住み続けたい」「誇りがある」「愛着がある」「住みごこち」「住みたい」とどうかかわっているかが読み取れれば、これはかなりおもしろい。6つの指標があるわけだから、指標間の関係も探ってみたくなる。既存研究もそう多くはないので、今回の調査結果をさらに蓄積・発展することでの成果も期待できる。そういう活用も想定してか、プレスリリース文の最後には「学術研究目的の場合、本調査個票データについて提供できる可能性がありますので個別にお問い合わせください」と付け加えられています。

 

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「幸福度」「誇り」とquality of city lifeとの関係

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/20111101/1320114383

 

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                               *GNH=Gross National Happiness(国民総幸福量)