「single-family」ゾーン内の宅地に最大4住宅が建てられる法案成立(カリフォルニア州SB9)

R.フロリダが『The New Urban Crisis』で危機感を訴えたように、アメリカ大都市では住宅価格の高騰で住宅問題が深刻になっており、ホームレスも増大。2020.4.7の本ブログの記事では「Single-Family Zoning」ばかりが卓越した都市計画そのものに大きな原因があるとの認識からこの部分を根本的に見直すべきとの議論があり、「都市レベルではミネアポリスやポートランド、バンクーバーなど。州レベルではオレゴンやカリフォルニアあたりで、「Single-Family Zoning」そのものを改革する試みがはじまっている」と紹介しました。

 

2021年9月16日。カリフォルニア州で「SB9」という新たな法案が承認され、標題にあるように、「single-family」ゾーン内の宅地に最大4住宅が建てられることになりました(2022.1.1発効)。もう一つ、公共交通軸に沿ったエリアでさらに高密度を許容する「SB10」も同時に承認されていますが、ここでは「SB9」に注目してその要点を整理します。「Single-Family Zoning」のままどうして、どのように住宅供給を促進しようとしているのか(小さめの敷地の住宅供給が促進されれば上記した都市問題の緩和に役立つはずだとの目論見による)。

第一。現在の郊外住宅地の典型な建て方は、大きな敷地の中に母屋と「離れ(ガレージなどに使う)」が建てられこれを「1軒」としている。SB9により、一定規模以上の宅地であれば最低敷地規模以上が確保できれば2つに分割でき、「母屋」のある敷地に1つ、分割された敷地に2つの計3戸の住宅を建てられるようにして事実上1軒を4軒にすることができる。単なる「できる」規定だとそれを阻止する自治体が出てくるためできるだけ阻止できないように法案を組み立てている。

第二。住宅問題解決が主目的であることから、既存居住者の追い出しにならない規定や超短期の契約にならないような規定をほどこすなどの配慮をしている。

第三。公衆衛生上、安全上、物的環境上の「害悪」を及ぼすおそれがある場合にのみ申請を却下できるとして、なるべく法の意図が達成できるよう工夫している。

 

さて、効果はいかほどと予測(予想)されているか。

自治体の対応やその地域の住宅のひっ迫度、不動産所有者やその地区の保全に対する意識の強さなどに左右されると思われるため正確な予想は困難ですが、ネットに出ているある大学の調査によれば、カリフォルニア州にある750万軒の「Single-Family」敷地の5.4%により新たに714000戸が生み出されるとされる、との数字も出されています。750万軒の5.4%は405000軒なので、たとえば25万軒が2分割(法律上は「分割」ではない)されて25万軒の新たな住宅ができ、残り15万軒は広い敷地で4分割(法律上は2分割してそれぞれに2軒ずつ建つ)されて45万軒の新たな住宅ができて、合わせて70万軒が新たに生み出されるといった感じでしょうか。

 

「california SB9」で検索すると、法案「SB9」そのものも読めます(かなり長文で複雑)。が、「SB9」への関心の高さは、あまたの記事や動画から読み取れます。とある動画の最後に解説者が語っていた以下のコメントが印象的でした。

「私の住む現在の環境を考えるなら宅地分割はよくないと思う。けれども、私の子供や孫の世代がカリフオルニアに住み続けられるようにと考えると、今回の法案の意味も理解できる」と。

 

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