AIによる世界のGDP押し上げ効果(AIは世界をどう変えるか(その6))

今朝の日経新聞1面に、人工知能(AI)が世界のGDPを2030年には15.7兆ドル押し上げるとの予測が紹介されています。「pwcによる」と書かれている出典の手がかりから引用元を探すと、「Sizing the prize」と題する報告書であることがわかりました。(⇒資料。2017年に発表)

「15.7兆ドル」との規模は、2020年のおよそ85兆ドルの18.5%。本当は2030年の予測GDPと比較すべきですが、見当をつけるための数字です。かなりの額であることがわかりますが、この報告書を読むと、いろいろなことがわかります。

「世界のGDP」という観点で重要そうなのは、当初はAIによる貢献のほとんどは労働生産性の向上だったものが、徐々に「Personalisation」や「Quality」が評価されて消費の増加に寄与しはじめる。しかし2025年頃まではまだ労働生産性の向上分が上回っている。2027年頃からグッと消費側への寄与分が伸びてきて、2030年時点では57%が消費サイドの寄与分となる。分野別に「AI Consumption Impact」の潜在力(定義は報告書p27に一応書いてあるが複雑で「独自に試算した」としか言えない)が5点満点評価で出ているので高い順に並べると、ヘルスケア3.7、自動車3.7、ファイナンス3.3、交通とロジステイクス3.2、テクノロジー・コミュニケーション・エンタメ3.1、小売3.0までが3点を超え、エネルギー2.2、製造2.2が低いスコアになっています。(全体平均は3.1)

ただしどの国もAI化が平均的に進むわけではなく、中国が2030年GDPの26.1%と断トツに高い割合でAIのウマミを享受しそれは15.7兆の半分弱の7兆ドルの規模となる。日本を含む「Developed Asia」は10.4%にとどまる。(日本のGDPは約5兆ドルとすると10%は0.5兆ドル。それでも50兆円ほどになるので、何もしないよりは大きい)

pwcでは日本向けのレポートも出しているのでそれを参照すると、AI活用上の日本の課題として「目的が不明瞭」「現在の技術から実現することを考えてしまう」「「試しにやってみる」が許されない」の3点をあげています。

 

2030年の話はまだまだ現在とつながった話。既に「2050年のAIによるシナリオ」((将棋と同じように)何万通りもある)も紹介されているので、「2050年のGDPにAIが貢献する割合・内容」なども出ているかもしれません。

 

 

[資料] 「Sizing the prize」

https://www.pwc.com/gx/en/issues/data-and-analytics/publications/artificial-intelligence-study.html

 

🔖検索 「GDP」