流域地図と「流域治水」

寒い冬の朝、研究室から雪化粧した南アルプスが見えることに気づいたことをきっかけに「雪山の大景観と地域イメージ」という記事を4年前のこの時期に書きました。昨年夏には、リニア新幹線の工事がストップしていることに関連して「南アルプストンネル」を書きました。それらをきっかけに「甲斐駒ヶ岳」「間ノ岳」「塩見岳」「赤石岳」といった南アルプスの主要な山々をさらにじっくりと見るようになり、ふと、「ここに降った雨や雪解け水はどの海に注ぐのか?」と考えるようになりました。

近年、とりわけこの数年、毎年夏から秋にかけての集中豪雨や台風により、実際に恐怖を感じるレベルでたびたび水害が発生し、発生までは至らずとも危うい状態となり「安心」度がきわめて低下していると感じられます。これに対処しようと「流域治水」との概念で政策立案・法律改正・流域協議会の設置・諸計画によるツールの開発・ハザードマップの更新と公開等が進められていますが、また2022年のシーズンがやってきます。

(自分としては)驚いたことに、さきの「ここに降った雨や雪解け水はどの海に注ぐのか?」という問いと「たびたび水害が発生し、発生までは至らずとも危うい状態となり「安心」度がきわめて低下していると感じられ」ることとは表裏一体の関係にあり、「流域」というとなにか人が多く暮らしている都市の側から見た生活圏の範囲といったイメージが漂うのに対して、「ここに降った雨や雪解け水はどの海に注ぐのか?」との観点からみた概念としては「集水域」という言葉のほうがピッタリきます。そして、それを一目で見て「わかる」マップはないものかと探したところ、下記のURLにたどり着きました。個人で作成している「痒いところに手が届く」Mapで、一瞬のうちに「流域」「集水域」がわかり、伸ばしたり縮めたりすればさまざまな発見があります。

https://tiles.dammaps.jp/ryuiki/

1つだけ例をあげると、「南アルプストンネル」で注目されている大井川水系は、天竜川水系と富士川水系に囲まれており、大井川源流の「間ノ岳」も、その西斜面に雨が降れば支流を経て天竜川へ(長野県⇒静岡県⇒最後は太平洋)、その東斜面に雨が降れば早川を経て富士川へ(山梨県⇒静岡県⇒最後は太平洋)と連なっていることが一目でわかります。(ということで、「ここに降った雨」の「ここ」は厳密に地点を指定しないと答えがないこともわかる! 上記の場合はどれも最後は太平洋だったけれども。)