『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』~ミレトスのアナクシマンドロスについて (都市は進化する75)

アナクシマンドロスって、誰?

カルロ・ロヴェッリが一連の著者で執拗にこだわっている「この人こそが自然科学の源流」とみるアナクシマンドロスについての書が日本語に訳されました。河出書房新社2022.2.28刊。原文(もともとは2009年の作品。2011年英語版)のタイトルを直訳すると「科学とはなにか-アナクシマンドロスの革命」となるようですが、売りは「(文系学者ではなく)理論物理学者によるアナクシマンドロス論」との意味が添えられています。

地球が宙に浮いていることを発見したのはイタリアルネッサンス期ではなくアレクサンドリアでもなく、もっともっと古い、今から26世紀前のミレトスにおいてであった。神話に頼らず「自然」そのものをじっくり観察し思考することでそのことは発見された。これが(自然)科学の源流であり、当時のミレトスにはこうした雰囲気が強く認められた。人類最初の都市計画学者ヒッポダモスもここに生まれ都市を科学的に計画する方法を確立した。これだけのことをしたミレトスには(証拠はないが)「今日の大学や、アテネにおける哲学の学び舎のような、教育と知的探求の双方に取り組む学術機関」(p112)が設立されていたはずである、と。

 

現在、最先端の科学(量子論)は説明のつかない未解決の問題を抱えている。一方で、「絶対」は無いとする文化的相対主義が台頭している。これらの袋小路から抜け出すためにもアナクシマンドロスまでさかのぼって世界を「読み直し」著した成果が『時間は存在しない』『世界は「関係」でできている』(⇒関連記事)なのです、となり、ロヴェッリは一巡します。

 

余談。ミレトスをグーグルアースで見てみると、その痕跡(遺跡)がよくわかります。いつか(26世紀前の)この地域を訪れたいと思わされる、ワクワクする刺激的な書です。

 

[関連記事]

『世界は「関係」でできている』+『時間は存在しない』

 

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【in evolution】世界の都市と都市計画
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