「levelling up」のための財源群のラインナップ

5月11日、12日に続き5月13日は、「levelling up」のための財政措置に関する情報が公表(=この時点でのアップデート)されました(⇒関係資料)。これはEUをブレグジットにより脱退したあと、EUへの支出金を拠出する必要がなくなり自らの考えでかなりの財源を使えるようになったことと関係しており、新型コロナで傷んだ国土やコミュニティを再生するべく編み出された「投資プログラム」であるとされ、以下の4つが並んでいます。ざっと全体を把握してその意図・内容・財源規模等の概要を書いてみます。

1) The UK Community Renewal Fund ; 2022年度からはじまる4)の準備のために2億2000万ポンド(約350億円)を英国全体に配分するものです。約1000件の応募があり500件弱が資金を獲得しています。金額とともにそのリストが公表されており、選ばれなかったものもプロジェクト名まで公表されています。平均40万ポンド(約7000万円)ほどのものなので、予備的なものと考えるとそれなりの事業計画ではないかと想像されます。たとえばリストの1つ目のブラックバーンの「低炭素技術ビジネスサポート&スキルアカデミー」は479400ポンド獲得しています。結果が公表された2021年11月には各地で「わが町は〇件中△件が採択された」「ロンドンからは20件出して6件採択された」などとメディア報道されたようです。これで終わりというよりも、これからのステップのための地ならしといったところでしょうか。

2) The Levelling Up Fund ; 名前からして中心的な財源のようで、48億ポンド(7700億円)と桁が違います。一度に配分するわけではなく、毎年「ラウンド」を分けて決めているようです。既に決定した「ラウンド1」をみると約100件が選ばれ、最初に出ている「Aberdeen City Centre Master Plan」には2000万ポンド(32億円)といった具合です(ざっとみると平均1000~1200万ポンド)。この事例の場合も、単にプランをつくるというよりハード事業も伴っているのではと想像します。「ラウンド2」の募集が既にはじまっています。

3) The Community Ownership Fund ; 1億5000万ポンドと最小規模の財源で、これも「ラウンド」に分けて配分されるものです。既に決定した「ラウンド1」では21プロジェクトで計530万ポンドということで、平均25万ポンド。1件あたりにするとそれなりの額ではありますが、まだ件数が少ない。とはいえ平均この額で配分していくと600件分となるので、名前のとおり、地域ニーズの高い地域のコミュニテイセンターなどに支援されるものと考えられます(「ラウンド1」の最初に出てくるのはスコットランドのある町のビジターインフォメーションセンターへの124843ポンド)。

4) The UK Shared Prosperity Fund ; 26億ポンドと、2)に次ぐ規模の財源ですが、募集はせず、(政策を反映した)数式により配分額を決めるようです。これも4ラウンドに分けて配分されます。「The primary goal of the UKSPF is to build pride in place and increase life chances across the UK」と書かれているこのファンド。2030年までを政策目標とする「levelling up policy」の決定打となるでしょうか。

 

[関係資料]「New levelling up and community investments」(5月13日公表)

https://www.gov.uk/government/collections/new-levelling-up-and-community-investments

 

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