Levelling-up財源をめぐる審問会(その1)

「レベルアップおよび再生法案審議過程(その4)」の中で、「国会のHPを見ると、どうやら下院Levelling-up特別委員会では独自に審問会(inquiry)を開いて財源問題を追及するようです」ととらえたその審問会が昨年末に設置され、大臣や地方自治体の長、担当者、学者などを招いてこれまでに4回の「oral evidence session」が行われました(2022.11/14、11/28、12/12、2023.1/23)。録画記録をみると、小規模の会議室でテーブルを囲み、国会特別委員会メンバーから問いかける形で、口頭陳述人(回により人数は異なる)に1つ1つ事実関係を確認していく、というスタイルをとっています。

 

ホームページには並行して書面により提出された各団体等からの「エビデンス」がアップされていて、現時点で43件のエビデンスが閲覧できます。かなり断片的にはなりますが、2023年になってからアップされた3件のエビデンスの内容を整理して紹介してみます。(FFL0041番(2023.1.18) Institution of Civil Engineersより、FFL0042番(2023.1.18) Business in the Communityより、FFL0043番(2023.1.24) Equality and Human Rights Commissionより)

全体に共通して指摘・要望しているのは、新しいファンドの政策効果の検証方法を明確にしてほしいという内容です。あとはエビデンスを提出した団体のミッションにかかわるものが中心となっていて、0041番は現在「Towns Fund」「High Street Fund」「Sustainable Transport Fund」のように目的別になってるファンドを束ねる形となる「The Levelling Up Fund」はどのように運用されるのか明確にすることを求め、0042番では同様な意見を示したあと、それを「regional」と「local」に分けたらどうか、といった提案をしています。0043番はBrexitに伴いEUへの拠出がなくなった資金を受け止める「The UK Shared Prosperity Fund(=UKSPF)」について、配分がかなり遅れていることと、UKSPFはEU拠出時代の額から43%も減額されていることに不満を述べています。特にUKSPFは国内の不平等(不均衡)解消を目的とするものであるため、このような少額ではLevelling Upという政策目標の達成は危惧されるという趣旨だと思われます。

 

次回の審問会は2023.1.30の午後3.30~6時に、Portcullis Houseというところで開催されます。調べてみると、この建物はビッグ・ベンの道路の向かい側の建物で、ロンドンに行くと利用することも多い地下鉄ウエストミンスター駅のある場所です。

とりあえず、どのような財源がかかわっているのかは、「「levelling up」のための財源群」の方でご覧ください。そこに、それぞれのFundの特徴がわかるように(わかる範囲で)事例に言及していますが、続々と、それぞれの財源が配分されつつあります。

この審問会がいつ終わるのかは不明ですが、いずれ取りまとめられられるものと思われます。まだ事実関係を調べたり各団体からの意見等を集めている段階であるため、どこかの段階で特別委員会としての勧告のようなものが出てくるのではと想像します。

 

本記事を「【研究ノート】Levelling-up and Planning」に入れました。
https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2022/05/18/100512