『未来をつくる言葉   わかりあえなさをつなぐために』(AIは世界をどう変えるか(その11))

(その9)の『新 基礎情報学』で紹介されているドミニク・チェン氏が、テクノロジーと人間と自然をつなぐ、現在の研究や実践活動に至った経緯をていねいかつvividに語る魅力的な書。新潮文庫版(2022.9.1刊)で読みました。この文庫本の表紙に書かれた以下の文章をまず。

「結局のところ、世界を「わかりあえるもの」と「わかりあえないもの」で分けようとするところに無理が生じるのだ。そもそも、コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共に在ることを受け容れるための技法である。「完全な翻訳」などというものが不可能であるのと同じように、わたしたちは互いを完全にわかりあうことなどできない。それでも、わかりあえなさをつなぐことによって、その結び目から新たな意味と価値が湧き出てくる。」

 

娘の成長に寄り添いつつ多言語を自由に行き来するなかから紡ぎ出される柔らかい日本語はとても魅力的で、(その1)から(その10)まで綴ってきた「AIは世界をどう変えるか」を総括して考える際の貴重な手掛かりを与えてくれます。

 

「コミュニケーションとは」を「都市計画とは」と置き換え、そこから続く文章を足し合わせると以下のようになります。

 

「都市計画とは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共に在ることを受け容れるための技法である。「完全な翻訳」などというものが不可能であるのと同じように、わたしたちは互いを完全にわかりあうことなどできない。それでも、わかりあえなさをつなぐことによって、その結び目から新たな意味と価値が湧き出てくる。」

 

「これからの都市計画理論への期待」において「第21,22,23章あたりにその傾向が特に出ていて、「合意形成」できないことがむしろ一般的な都市計画の場面であるとの認識から、では何を決められるのか、決められる状態とはどういうことなのかが根本レベルで問われている。それらを受けて第25,26,27章で「理論化」しようと格闘する模様がつづられる」(『都市計画 359号』p87)とした箇所がなぜか重なり、さらにこのあたりをさぐってみようかと思うところです。

 

※「第21,22,23章」「第25,26,27章」は、「これからの都市計画理論への期待」で紹介している『The Routledge Handbook of Planning Theory』の章番号。

 

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