「Big Society」と「Localism(近隣計画含む)」の政策評価

2015年に出版された『Planning against the Political』(副題:Democratic Deficits in European Territorial Governance)という図書の中で、Allmendinger教授らによる「Post-political regimes in English planning from Third Way to Big Society」との論考が掲載されています。

少し解説すると、日本でもかなりそうですが、ベルリンの壁が崩壊してアメリカ型資本主義一色に覆われたグローバルな都市計画環境の中で、都市計画がもっていた政治性(民主的に合意形成し選択・判断すること)が薄れ、「Post-political regimes」ともいうべき、誰もが賛成できる「持続可能な開発」「都市再生」などの名のもとに「官民パートナーシップ」を組み「エリアマネジメント」を進めます、といった具合に決定プロセスもあいまいにして物事が進められている。イギリスでも(ヨーロッパでも)それは似ていて、ブレア(労働党)政権時代に掲げた「第三の道」も現政権(特に「Big Society」を持ち出したキャメロン政権)もそのような「Post-political」時代の都市計画を行ってきたととらえられる。そのような視点から、「第三の道」や「Big Society」なる掛け声の中身が実際にはどういうものだったかを分析する、という内容です。

 

ここでは近隣計画が「Big Society」の中でどのくらいの位置を占めていたと分析されたかだけ記します。

著者は「Big Society」を構成する各政策を、「(選挙で)票がとれるかどうかを考えたプラグマティックな側面」「小さな政府と地方分権」「経済成長とそのためのガバナンス」「道義をわきまえた規制」の4つの面からみてどの性質をもつかを分類。「近隣計画」は前半の2箱に入ります。しかし政策が最も多いのは3つめの「経済成長とそのためのガバナンス」の箱。4つめの箱に入る政策は限定的でした。

結局、「近隣で決定できる身近な都市計画」とか言いながら(それは皆が反対しないので票になるし分権ともいえる。(そしてその分、中央政府の負担も減る勘定にもなる))、実際に力を入れたのは「経済成長とそのためのガバナンス」の強化であった、というのがこの分析の主要な結果の1つでした。

その先の結論めいたものも書かれていましたが、まるめて表現すると、「このままじゃすまないでしょう」という内容です。(この図書の主旨がそういう意図から編集されているので。)

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

このファイル頭のほうに、「(運用後の)政策評価」との項目を設けて反映しました。