イギリス都市計画定点観測

ロンドンLiverpool Street駅の大改造計画が熱い議論になっています(その2)

「この決定は、すべてのロンドンの、そして英国の歴史的建造物が将来どのように扱われるのかの方向性を決定づけることになるだろう」(London Evening Standard, 2023.10.25)とも表現されたロンドンLiverpool Station駅の再開発についての議論は、いわゆる世…

ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画が大臣により却下されました (その4 : 大臣の決定は誤りとの判断が下されました)

ロンドンの繁華街における再開発計画を大臣が却下したことを、M&Sが不服として高等法院に訴えていた重要案件について、2024年3月1日に高等法院の判断が示されました。ほぼ全面的に大臣の誤りを認めるもので、国の対応にもよりますが、なかなかこの判断を覆す…

ストーンヘンジのバイパス計画への2度目の申立ては却下される

2023年9月4日の記事で紹介した高等法院への標記申立てですが、2023年12月に3日間のヒアリングがあったあと、2月19日に却下が言い渡されました。一応その判断書を[資料]とします。 却下の根拠としては、申立てられたさまざまな「error of law(誤った法の適用)…

「Street vote development orders」に関する協議

昨年成立したLevelling-up and Regeneration Act(レベルアップおよび再生法)の中に、街路単位で将来可能な開発の内容を決められる「Street vote」という条項があり、その具体化に向けた協議が行われています(⇒資料)。2023年12月22日に公表され、2024年2月2日…

Levelling-up and Regeneration Act 2023 (都市は進化する185)

「Levelling-up and Regeneration Act 2023」が10月26日の裁可により成立し、本日からようやく「Legislation.gov.uk」サイトで検索できるようになりました。 https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2023/55/contents/enacted 本記事を「【研究ノート】Levell…

上院「第三読会」を経て国王の「裁可」(=法の成立)へ (レベルアップおよび再生法案審議過程(その14)) [2023.10.26更新=最終]

上院「報告ステージ」がさきほど終わり(現地時間9月18日午後9時半すぎ)、「第三読会」が9月21日に予定されました。ほぼ終局だと思います。最終法案も間もなく公表されるものと思われます。「裁可」までのプロセスをここに書き足していきます。 [2023.9.20追…

『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』(文庫版)

最近購入した文庫本。ちくま文庫2023.8.10刊。ブレイディみかこ著。 最初のエピソード「刺青と平和」を読みながら、「あれっ? この本、既に買った記憶がある、、もしかすると」、と思いながら軽いので手放さず読み終え、既に買ってあったかもしれない単行本…

上院「報告ステージ」の採決で「Healthy Homes」条項が「可」となったことの分析 (レベルアップおよび再生法案審議過程(その13))

2023年9月4日の上院「報告ステージ」第5日目において、修正案191Aについて採決があり、「158対149で採択されたようです」と、(その11)の中に昨日追記したのですが、「採決されたようです」の部分をより明確にしたいと探したところ、「the public whip」とい…

ストーンヘンジをバイパスする道路計画を可とする大臣判断を不服として2度目の申立て

ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画の却下をめぐる不服申立てについてフォローしている最中(⇒(その3)へリンク)ですが、イギリスらしいといえばさらにそうだともいえそうなストーンヘンジをめぐる2度目の申立てがなされるようです。その経…

ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画が大臣により却下されました (その3 : M&Sが不服申立てを表明)

やはり、大臣による却下は誤った判断だとして、高等法院(High Court)への申立て可能な「判断後6週間」の(おそらく)最終日となる本日8月31日、M&Sのホームページに不服申立てを行う旨の短いながらもかなり強いメッセージが掲載されました。さきほどから各メデ…

@Sohoplace (都市は進化する175)

ロンドンのウエスト・エンドといえば劇場街。その街で新築物件としては50年ぶりとなるSohoplace Theatreを紹介する記事が、FT Weekend(8/12,13日号)に出ています。オフィス市場縮退のあとの新たな文化機能に注目した記事で、50年前のバービカンなど、1990年…

ロンドンLiverpool Street駅の大改造計画が熱い議論になっています

並行して取り上げているロンドンOxford Streetの再開発をめぐる国の介入(⇒関連記事)は、既に許可となっていた再開発計画に国が介入して「却下」となったばかりのホットな話題です。 それに対して本日とりあげるLiverpool Street駅の大改造計画は本年になり具…

ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画が大臣により却下されました (その2: 却下の理由づけ)

地元Westminster区も、ロンドン市長も、インスペクターも揃って「可」とした再開発計画に対し、大臣が「否」としたのはどのような論理や考えにもとづくのか。 2023.7.24の記事の続編です。 特に、「地元区、ロンドン市長、インスペクターの三者がすべて「可…

「Levelling-up and Regeneration Bill : consultation on implementation of plan-making reforms」が協議に付されました(2023.10.18まで) (レベルアップおよび再生法案審議過程(その12))

審議中の「レベルアップおよび再生法案」が成立したあと、どのように都市計画の計画策定に関する改革を実行するかに関する協議書が、昨日、協議に付されました。計画策定をよりシンプルにして策定期間が短縮できることが目標です。 昨年12月22日に協議に付さ…

ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画が大臣により却下されました

地元Westminster区も、ロンドン市長も、インスペクターも揃って「可」とした再開発計画に対し、大臣が「否」とする通知を出し(2023.7.20。⇒資料)、大きな話題になっています。 対象となる建物はロンドンの繁華街Oxford Streetに面して建つ(主要なファサード…

イギリス国会での全法案形成過程などがリアルタイムで「見える」便利なサイト

現在、「レベルアップおよび再生法案」をリアルタイムでウォッチしているところですが、最近、イギリス国会での全法案形成過程がリアルタイムでわかる便利なサイトがあるのに気づきました。2019年からはじまっていたようで、気づいたのは2か月ほど前です。「…

上院「報告ステージ」が7月11日にスタートします (レベルアップおよび再生法案審議過程(その11)) [2023.9.19更新]

上院委員会審議が終了してからほぼ1か月が経ち、このほど、次の手続きである「報告ステージ」が7月11日にスタートすることが示されました。それに向けて次々と修正案が提出され、段階的にまとめられ公表されています。「報告ステージ」スタートまでまだ2~3…

上院委員会審議が終了した時点の法案がアップされました (レベルアップおよび再生法案審議過程(その10))

2023年5月24日に上院の委員会審議が終了し、修正を加えたこの時点の法案が「HL Bill 142」として公表されました。 ここでは、国会上程時(2022.5.11)の法案(Bill 006 2022-23)と、下院から上院に送られてきた法案(2022.12.19 HL Bill 84)、そしてHL Bill 142…

国会の特別委員会「都市計画システム改革をめぐる審問会」で大臣が証言します(4月24日)

イギリス都市計画システムを改革しようと昨年末からの動きがあり、2023年2月には国会特別委員会に審問会が設置されました。その第2回が2023.4.24に予定され、大臣から直接話を聴くようです。イギリス時間午後4時から(日本時間深夜0時から)。 【研究ノート】L…

上院委員会で審議される修正案の例 :「Healthy Homes」をめぐって (レベルアップおよび再生法案審議過程(その9))

上院委員会審議は7日目まで進みましたが、512項目にわたる修正案のうちまだ200番までいくかいかないかあたりです。というのも、特に5日目以降、審議が始まるのが(前に予定されている審議が終わったあとの)午後8時半頃となり、議場にとどまる議員がまばらな中…

本日(2月20日)より委員会審議(上院)がはじまります (レベルアップおよび再生法案審議過程(その8))

Levelling-up and Regeneration Billの審議も終盤に入ってきました。 本日より委員会審議(上院)がはじまります。 予告された委員会日程は以下のとおりです。 2023.2.20月Parliamentlive.tv - House of Lords (day1:15時24分頃より) 2023.2.22水Parliamentliv…

Levelling-up時代の近隣計画(その4) : ロンドンWestminster区の事例から

全国(その2)⇒ロンドン(その3)とみてきたので、さらにロンドン内の区に着目します。 近隣計画が制度化された際、区内全域に迫る勢いで区が主導して近隣計画策定を進めようとしたロンドンWestminster区をとりあげます。ウエストエンドなどのロンドンの主要繁華…

Levelling-up時代の近隣計画(その3) : ロンドンの全数とその動向など

(その2)で集計した全国(イングランド)の近隣計画に続いて、ロンドンの場合をみてみます。 表ではロンドンの2017.9時点と2022.9時点が比較できるようにしました。計画策定段階の区切り方や表示方法が全国とロンドンとでは異なり、また、ロンドンの2017年と202…

Levelling-up時代の近隣計画(その2) : まずは全数の確認から

2012年4月6日に施行された「近隣計画」の成果を、2022年9月30日時点の状況を確認することにより、「10年半の成果」の総体としてながめてみます。資料を2つ。 1つ目が、2970件のエクセル表。「locality」というかなり公式に近い主体が運営するサイトのページ…

Levelling-up時代の近隣計画(その1) : 新システムへの移行イメージと諸課題

少し気が早いですが、現在国会審議中の「レベルアップ及び再生法」が2023年春に公布され、現在協議中の政府提案による新都市計画システムに移行した場合の、「近隣計画」について考えます。 2010年代の「ローカリズム」政策の目玉が「近隣計画」の創設をはじ…

Levelling-up財源をめぐる審問会(その1)

「レベルアップおよび再生法案審議過程(その4)」の中で、「国会のHPを見ると、どうやら下院Levelling-up特別委員会では独自に審問会(inquiry)を開いて財源問題を追及するようです」ととらえたその審問会が昨年末に設置され、大臣や地方自治体の長、担当者、…

「Levelling-up and Regeneration Bill : Reform to National Planning Policy」が協議中です(3月2日まで) (レベルアップおよび再生法案審議過程(その7))

上院へと移った「Levelling-up and Regeneration Bill (レベルアップおよび再生法案)」の審議ですが、2023年1月17日に「Second Reading(第二読会)」が行われ、現在、1月末頃からはじまると思われる委員会審議(修正案が1つずつ審議される)に向けて準備中です…

審議は上院(House of Lords)に移りました (レベルアップおよび再生法案審議過程(その6))

下院での審議の結果、「メモ書き程度」だった「場所とり条項(placeholder clause)」にも中身が書き加えられ、さまざまな修正もなされて、「これで一応いけます」というレベルの法案が上院に届けられました(⇒資料1)。それを受け取る形式的な「1st reading」が…

下院段階の法案がほぼ固まったようです :「Street vote」に着目して (レベルアップおよび再生法案審議過程(その5))

12月13日に「Report Stage」最後の審議があり、どうやら下院における法案がかたまったようです。多くの修正案を処理するために審議は2回に分けられ、その第1回が11月23日になされました。12月13日は2回目という位置づけで、これをもって「Report Stage」は終…

下院Levelling-up特別委員会委員長からLevelling-up大臣への手紙(2022年8月24日) (レベルアップおよび再生法案審議過程(その4))

昨日届いたTown & country planning 2022年9月/10月合併号を1枚めくると、「new priorities under the new prime minister?」と題する短い論説が出ていました。「新首相」はどちらのことだろう? などとやや興味本位で読んでみると、今回の法案(Levelling-up …