地域が連携し「住みたい都市」をプロデュースする

横浜で都市計画学会全国大会開催(11月8,9,10日)

eBook『イギリス近隣計画 その政策・制度・運用』試作中

 本ブログに関連するさまざまな成果を「eBook」の形でまとめてみよう、というこで試行錯誤します。形ができたら固定しますが、少しあがいてみますので、、、

その第1号が『イギリス近隣計画 その政策・制度・運用』。

右帯のリンク集にある「【研究ノート】Localism and Planning」が長くなりごちゃごちゃしているので、まずは「イギリス近隣計画とはこういうものです」という教科書のようなものをつくることにしました。1年半ほど時間が古くなるので「最新」ではありませんが、基本を知ったうえで、「最新」については記事についている日付をみると次々と新しい状況に進化しつつあるのがわかると思います。

 


 

「Big Society」と「Localism(近隣計画含む)」の政策評価

2015年に出版された『Planning against the Political』(副題:Democratic Deficits in European Territorial Governance)という図書の中で、Allmendinger教授らによる「Post-political regimes in English planning from Third Way to Big Society」との論考が掲載されています。

少し解説すると、日本でもかなりそうですが、ベルリンの壁が崩壊してアメリカ型資本主義一色に覆われたグローバルな都市計画環境の中で、都市計画がもっていた政治性(民主的に合意形成し選択・判断すること)が薄れ、「Post-political regimes」ともいうべき、誰もが賛成できる「持続可能な開発」「都市再生」などの名のもとに「官民パートナーシップ」を組み「エリアマネジメント」を進めます、といった具合に決定プロセスもあいまいにして物事が進められている。イギリスでも(ヨーロッパでも)それは似ていて、ブレア(労働党)政権時代に掲げた「第三の道」も現政権(特に「Big Society」を持ち出したキャメロン政権)もそのような「Post-political」時代の都市計画を行ってきたととらえられる。そのような視点から、「第三の道」や「Big Society」なる掛け声の中身が実際にはどういうものだったかを分析する、という内容です。

 

ここでは近隣計画が「Big Society」の中でどのくらいの位置を占めていたと分析されたかだけ記します。

著者は「Big Society」を構成する各政策を、「(選挙で)票がとれるかどうかを考えたプラグマティックな側面」「小さな政府と地方分権」「経済成長とそのためのガバナンス」「道義をわきまえた規制」の4つの面からみてどの性質をもつかを分類。「近隣計画」は前半の2箱に入ります。しかし政策が最も多いのは3つめの「経済成長とそのためのガバナンス」の箱。4つめの箱に入る政策は限定的でした。

結局、「近隣で決定できる身近な都市計画」とか言いながら(それは皆が反対しないので票になるし分権ともいえる。(そしてその分、中央政府の負担も減る勘定にもなる))、実際に力を入れたのは「経済成長とそのためのガバナンス」の強化であった、というのがこの分析の主要な結果の1つでした。

その先の結論めいたものも書かれていましたが、まるめて表現すると、「このままじゃすまないでしょう」という内容です。(この図書の主旨がそういう意図から編集されているので。)

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

このファイル頭のほうに、「(運用後の)政策評価」との項目を設けて反映しました。

 

 

レファレンダムを通過した近隣計画が839に(2019.7.31時点)+全件Map

近隣計画。

ついこのあいだ「200件を超えた」と思っていたら、それは2016.7.27のこと。それから3年で639件増えて839件になっていました。

このことは政府の最新の「NOTES ON NEIGHBOURHOOD PLANNING」で(2019.9月発行。下記URL)

https://www.gov.uk/government/publications/notes-on-neighbourhood-planning-edition-23

 

成果を統合したサイトもどんどん充実・開発されていて、下記サイトはその839件がイングランドの地図にプロットされ一目でわかります(本日時点では2019.9.30の情報。ほぼリアルタイムです)。全国にぎっしり広がった感じです。地図を大きくして見てみてください。

https://www.neighbourhood-planning.co.uk/p/interactive-neighbourhood-plan-map.html

上記URLは、Mapのページを当ててありますが、さまざまな材料・情報が出ています。

 

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

 

「羽沢横浜国大駅」とまちづくり

前回3日の記事で、羽沢横浜駅の開業について、「横浜の準郊外地に駅が開設されることで、新しい時代に向けてのライフスタイルや都市ビジョンの実現に向けたきっかけにもなる」と書きました。10月12日の【公開講座】を皮切りに、大学の側でも、地域の側でも、事業者の側でも、さまざまな検討がなされると思われます。

2019年11月30日の開業は「SJ線(相鉄JR線)」の開業で、いわば第一段階。ダイヤも発表されています(⇒資料1)。「ST線(相鉄東急線)」の開業は、現時点では「2022年度下期」とされます。これを第二段階とすると、2019年11月30日から数えておよそ3年後。さらにその後の段階を第三段階とします。

この間、駅前開発事業が計画されています。ここでは、「2019年11月30日からいくらかおいて工事がはじまりST線開業後いくらかおいて竣工・開業」と想定しておきます。あくまで想定ですが。

もしこの通り進むとすると、①2019.11.30まで、②駅前開発工事がはじまるまで、③ST線開業まで、④駅前開発工事竣工・施設開業まで、⑤その後の街の動き、の5つの異なる時期があることになります。④まで最短で4年。⑤の初動期まで含めて5年ほどのプロセス。

 

「横浜の準郊外地に駅が開設されることで、新しい時代に向けてのライフスタイルや都市ビジョンの実現に向けたきっかけにもなる」ことを考えるためには、⑤になってからではなく、①に向かうのと同時に②③④⑤のことも同時に折込みながら、この貴重な機会を最大限活かすことが大切です。

 

さて、まずは①まで。現時点でわかっている短期的情報をまとめてみます。

 

2019.10.12(土) 公開講座 当日参加歓迎 (⇒前回10.3記事)

2019.11.25(月) 「地域創造論」で「2020年代に向けた大学と地域~羽沢横浜国大駅開業を前に~」を講義。(大学院共通科目。受講者向け)

2019.11.30(土) 開業当日。現地にてイベント予定(準備中)。ダイヤは[資料1]。

2019.12.16(月) 講演会「成長する駅、発展する駅」

 

 

[資料1]

(相鉄発表) 

https://www.sotetsu.co.jp/media/2019/pressrelease/pdf/190906_01.pdf#search=%27%E7%9B%B8%E9%89%84JR%E7%B7%9A+%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%27

(JR発表)

https://www.jreast.co.jp/press/2019/20190906_ho01.pdf#search=%27%E7%9B%B8%E9%89%84JR%E7%B7%9A+%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%27

 

「【公開講座】羽沢横浜国大駅開業を契機とした地域と大学のさらなる連携強化」(10月12日(土)は台風により延期)

羽沢横浜国大駅が11月30日に開業します。

「最寄り駅」の無かった大学にとって重要な節目となるだけでなく、「最寄り駅」の無かった、まだ周辺には田園風景もひろがる横浜の準郊外地に駅が開設されることで、新しい時代に向けてのライフスタイルや都市ビジョンの実現に向けたきっかけにもなると考えられます。

11月30日の当日イベントや、12月の講演会、さらにはその先に向けたまちづくりの取り組みなど、「羽沢横浜国大駅」が今後注目されるはず。

まずはその第一弾として、【公開講座】の形で、じっくりとこの「駅」の意義や横浜国大の地域連携の取り組みの全貌、具体的なまちづくりの取り組みなどについて報告。そのあと、横浜市および相模鉄道の関係者を交えたディスカッションがおこなわれます。

この機会に是非、「羽沢横浜国大駅」の可能性を考えたいと思います。

 

[公式案内]

・大学HP

https://www.ynu.ac.jp/hus/sangaku/21887/detail.html

・チラシ

上記「大学HP」の案内の下方の「チラシ」欄で。

サウスバンク&ウォータールー近隣計画(ビジネス近隣計画)の投票が10月24日に行われます(ロンドンにおける近隣計画の最新動向(8))

ロンドンを訪れた人の多くが訪れる「サウスバンク」。ターミナル駅のある「ウォータールー」を含むこのエリアの活発かつユニークな都市計画の歴史は古く、一言では書ききれませんが、このエリアの近隣計画案への投票が2019年10月24日に予定されました。居住者の投票と、ビジネスセクタの投票の2つの投票があります。

その意義とポイントを短くまとめます。

 

第一。このエリアの都市計画の歴史は、本ブログ右帯「リンク集」下方にある「ダウンロードセンター」の下の方の『イギリス都市計画の新動向 新世紀へのチャレンジ』(2001.8)で。

第二。このエリアのエリアマネジメントの“元締め”「South Bank Employers’ Group(SBEG)」のサイトはこの名前で検索。上にある帯「OUR WORK」を見ると、いかに多くの業務をこなしているかがわかります。近隣計画の位置づけは、その中の「INFLUENCE」によく表れています。自らのミッションを実現するための「影響」の1つと捉えられています。

第三。他の「影響」4つをざっとみると、「Representation」は地域の声をロンドン市(議会)等で伝えたり政策に組み入れたりすること、「Business improvement district(BID)」はビジネスセクタから資金を集めて地域活性化に再投資すること(BIDエリアは近隣計画エリアのうちテムズ河寄りの文化機能やビジネス機能が集中する部分に設定)、「South Bank Forum」はこのエリアのガバメントに近い存在でさまざまな課題を報告したり議論する場。「South Bank Partnership」は行政担当者と議員とSBEGが地域のために調整したり各方面に働きかける役割。かなり徹底しています。

第四。このように、5つの「影響」のうち1つのツールとして近隣計画を活用しようとしているのがサウスバンク&ウォータールー。近隣計画の計画書を見ると(印象では)かなりあっさりしており、背後に控えるさまざまな「影響」の1つ(でしかないもの)として、ピンポイントで、法定の近隣計画というツールをうまく使って書き込んでおくべきことはシンプルに書いておく。そうすることで、他の「影響」もフルに発動して影響力を発揮する、との構造にみえます。

第五。そうした位置づけが近隣計画書によく表れているのがディベロッパーに向けて書かれた「ガイドライン」。近隣計画本体ではなく「付録」の1つとはいえ、こうした形で「この地域での開発のあり方」を示した例は(これまで見た中では)初めてです。

 

なお、メイフェア近隣計画の投票も翌週の10月31日に予定されています。ロンドンを代表するこれら2つの近隣計画により、「近隣計画」の意味(や限界)や活用方法の多くが読み取れそうです。

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

イノベイティブな政策の波及 (近隣計画をめぐる新トピック(9))

TPR(Town Planning Review)誌2018年1号に「Neighbourhood planning and the production of spatial knowledge」という論文が掲載されています(著者はQuintin Bradley)。その中で、本ブログの「近隣計画をめぐる新トピック(3)」で取り上げたリゾート地セントアイヴズの近隣計画でその正当性が認められた 「主たる居住を目的としない住宅開発の禁止」政策について、次のような表現がありました。

「Once established in planning policy, neighbourhoods up and down the coast from St Ives followed suit and implemented plans to encourage affordablehomes for primary residence」

 

そうか。たった1つの事例とはいえ、財産権を制限できる方法が裁判で認められると(デベロッパーがその政策は不当だとして訴えていたもの)、その波及効果は普遍的なものになるのだと。

普遍的といっても、そうした政策の必要性と正当性が説明されなくてはならないのですが。

そこで、「neighbourhoods up and down the coast from St Ives followed suit 」となっている部分を、とりあえずセントアイヴズから時計回りに4事例、反時計回りに4事例の採択された近隣計画(内陸部は避けて、海に面するところのみとりあげる)について、同様な政策が入っているかどうかをラフに調べてみました。超有名なセントアイヴズほどは「リゾートのみの利用住宅お断り」政策の必要性はそうは高くないのではとの仮説のもとに。

以下は結果です。

第一。「時計回り」の半島の北側の4事例中2事例が、「反時計回り」の半島の南側の4事例中2事例の、合わせて8事例中4事例が同様な政策を書き込んでいました。上記文献にも「すべての近隣が」とは書いてないので、「up and down the coast from St Ives followed suit 」のおよその雰囲気がつかめました。そもそも「海に面するところ」というアバウトな設定なので、厳密ではありませんが。

第二。今度は「Once established in planning policy」の部分から、セントアイヴズ近隣計画がレファレンダムを通過した2016年5月の「前」か「後」かで見てみます。同様な政策をもっていた4事例はすべて「後」でした。もっていなかった4事例中3事例も「後」だったので、「後」の7事例に限れば7分の4で同様な政策を入れたことになります。

第三。結局、セントアイヴズ近隣計画が「Once established in planning policy」したことはおおきな出来事だったといえそうです。しかし、残り1つの、「前」つまり2015年8月にレファレンダムを通過した近隣計画に、「類似」とまではいえないけれども主旨が近い政策がありました。名付けて「Local Connection」政策。「HO5」という政策で、なんだかラグビーワールドカップの出場資格に似て、「この土地に5年以上住んだり働いたりしていたこと」などの4つの条件などにより「Local Connection」の有無を判断しているようです。もしかするとこうしたこれまでの工夫の積み重ねの上にセントアイヴズ方式ができたのかもしれません。

 

[付記] コーンウォール県における近隣計画策定の取り組み状況図を見ると、かなりの勢いで近隣計画策定が進んでいることがわかります。セントアイヴズは158番。

https://www.cornwall.gov.uk/media/40170380/neighbourhood-planning-activity-map-a3-august.jpg

 

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)

シンガポール市街地サーキット

今朝の日経新聞の前の方に、「歴史的建築 高級ホテルに」「「非日常」で付加価値」との見出しで、ミャンマー、カンボジア、マレーシア、シンガポールの事例が。記事の出だしは、シンガポールのラッフルズホテルが先月、約2年の修復を経て営業を再開したという話です。

 

そこで思い出したのが、明日からはじまるシンガポールF1グランプリ。市街地コースは他にも5月のモンテカルロ(モナコ)などがありますが、シンガポールは夜間開催のため、光を使った多彩な演出など、見所満載です。ラッフルズホテルは、1ブロック手前で曲がる設定なのでホテルからの観戦は難しいと思われますが、先のほうでヘアピンになっている角の、ライトアップされ美しいフラートンホテルは映像にも入ってくると思います。

 

「都市イノベーション・next」的に注目したいのは「道」の可能性。都心部では道路が占める面積が30%以上にもなります。銀座の歩行者天国も、京都の祇園祭も、普段は自動車に占拠されている道路の転用。F1は自動車が走るではないかと叱られそうですが、「「非日常」で付加価値」にはなっています!

 

数年前。観光にシフトしすぎて「品格」に首をかしげたラッフルズホテル。修復によってどうなったか見てみたいです。都市計画的にもまだまだ進化しそうなアジアの都市。これからが楽しみです。




ラストワンマイル/ファーストワンマイル

今朝の日経1面記事。1975年には「企業価値」の8割以上を「有形資産」が構成していたのに対し、「知識社会化」が進展して、2015年には「無形資産」が8割以上となった。それに伴い「労働分配率」が減少している。(以上は掲載されているデータから)

この記事ではさらに続けて、ウーバーテクノロジーが「運転手を従業員として扱わず、最低賃金などを払う負担を免れてきた。足元では待遇改善を求める動きが広がる。」と記しています。

知識産業化の中で企業の無形資産化が進み労働分配率低下を直観する例をもとに、「都市イノベーション・next」を考えます。とりわけ消費者が家にいながらサービスにアクセスする「ラストワンマイル/ファーストワンマイル」について。このことは、在宅福祉サービスなどとも合わせて、超高齢化時代の重要なイノベーション分野だと思います。

 

例として、ウーバーイーツ。先月8月末よりローソンと組んで商品(まずは100品目に限定)の配達実験もスタートしたので、「近くのコンビニやレストランからいつでも欲しいものを届けてくれる」ビジネスモデルについて。

消費者が「配達料」を上乗せして支払う。配達員は「配達すること(受け取り+受け渡し)」と「移動距離」を変数として賃金を受け取る。レストラン(やコンビニ)は「手数料」を払い(それでも利益が出れば)メリットを享受。さて、企業側はどう利益があがるかのモデルです。一説には(いくつかの条件をもとに)「1回当たり1000円あたりが分岐点」などという簡単なシミュレーションも出ていますが、変数は本モデルの普及(やライバルとの関係)に影響されて刻々と変化。企業ビジョンは「食」のあり方自体を変えるとのことのようで、「家からキッチンが無くなる?」などの未来的都市生活の変化も予感させます。まさにインターネットアプリを駆使する「知識産業化の中で企業の無形資産化が進」む象徴例だと思われますが、「労働分配率低下」の部分については、「今のところ配達員にはメリットがある変数になっており、人材を確保したうえでモデルを進化させるのではないか」などという見立ても。「経営者のみぞ知る」世界ではありますが、もう1つ最後に感じるところを。

 

「ラストワンマイル/ファーストワンマイル」はこれからの都市生活のうえで最重要ともいえる分野。「家まで届く」こともさることながら、「近隣で行う」「アーバンビレッジとしてものやサービスやコトが活発で住みやすい」などという、都市の基本単位としての「近隣」での住みやすさと直結していると思います。「ウーバーイーツ」モデルもそんなに遠くはない、どちらかというと近くのコンビニ、近くのレストラン(やゴーストレストラン)とつながり、配達員も身近なまちで暮らしながら収入を得ている。「知識産業化の中で企業の無形資産化が進み労働分配率はむしろ向上しつつ近隣コミュニティが活性化する」都市イノベーション・next像を描くための手がかりになりそうです。