「ミヤケ(屯倉)」の設置戦略と都市の発生の関係

2024年3月24日に放映された「ヤマト王権 空白の世紀」(NHK古代史ミステリー)の中で、製鉄技術の革新により武具の大量生産が可能になり(軍事用・移動用の馬の東国での大量飼育とも相まって)全国制覇が成し遂げられた、とのストーリーが紹介されました。
3世紀から6世紀頃の日本の古代史・地域史・地域拠点形成史が少しずつ解き明かされています。

4月17日の「都市探訪264 初瀬朝倉」は、当時ヤマト政権勢力拡大の中心にいた雄略天皇が指揮をとっていた場所にまつわります。
ヤマト王権の勢力拡大過程で各地に設置された「ミヤケ(屯倉)」は、ローマ帝国拡大過程でつくられた街道と植民市に近い関係にあるかもしれない。それら植民市は現在の多くのヨーロッパ主要都市の原型になったということを考えると、日本の「ミヤケ」はもしかするとその後の日本の各地の都市発生と関係しているかもしれない(「その後」は途絶えたとしても「その時」の国土経営戦略としては重要)、との興味から、古代の主要地域だった吉備国がヤマト王権に組み込まれる過程を描いた『吉備の古代史 王国の盛衰』(NHK Books 648,1992)からミヤケの設置戦略の解釈を読み取ります。

著者の門脇禎二氏によれば、伝統的な強勢が残る吉備地域におけるミヤケ設置は「その旧領域の周辺地域からはじまった」(p122)。児島屯倉は東のおさえとして重要な拠点となった。しかし、見逃しがたいのは、沼田(ぬた)川河口のミヤケである。現在の三原市に位置するこの場所は、旧山陽道から分岐して(当時の一大勢力だった)出雲方面に向かう要衝にあり、ここを押さえることで「腹背から吉備王国の勢力を封じ込めようとしたのではないか」(p124)。

このあと律令制がもたらされ「国府」を設置して地域が経営されることになるので、現在の都市に直接つながっているのはこちらかと思われますが、国土を経営していく側からみれば、ミヤケの設置はたいへん重要なことだったのだろうと想像します。

 

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古代都市地域構造の変遷(3C~6C)素描

 

【In evolution】日本の都市と都市計画
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http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20170307/1488854757

 

オーキッドバレーミウラ (都市は進化する217)

この4月から神奈川新聞電子版を見ています。いつだったか洋ラン栽培家(農家?)の記事が大きく出ていて、いつか行ってみようとGoogleMapにプロットしておいたところ、つい先日、さっそく立ち寄ることになりました。

三浦半島の先の方の地形は隆起と侵食によりたいへん複雑ですが、その結果、海を介して房総半島や富士山が変幻自在に視界にあらわれ、いろいろな発見があります(⇒都市探訪27139)。「バレー(谷状の場所)」も無数にある。そうしたバレーにある洋ラン(オーキッド)農園ということで社名をつけたのだろうと、実際に訪ねてみて合点しました。

時間に沿って正確に表現すると、、、
まず、引橋のメイン道路から左に入りしばらく尾根道を行くと、谷方向に、薄暗い小道が。GoogleMapは確かにそこを指しているので、そろそろとその薄暗い小道を降りていくと、母屋および複数の温室があります。さらにくねくね曲がりながら降りていくと、視界が開け、広い踊り場のような場所に大型の温室が。入口にいた方にお願いして中を見せていただきました。
中は感覚的にいうと、「ランの温室」というより、「ランという品種を種から育てあげるための大型実験室兼工場」のようにも見えました。もちろんランがたくさん咲き乱れていてそれだけでうれしくなるのですが。(「現在、温室ではかれんなエピデンドラムや、珍しい形が人気のタケノコ系ランが満開。身近に置きたくなる美しさだが、「親株なので非売品で。うちが主に販売するのは『何年か後に花が咲く』苗なんです」」というのが神奈川新聞の解説。この農園はもとはミカン畑だったとのこと。)

小道をさらに下るとキャベツ畑に出ます。

 

AI時代の21世紀。今、半導体ブームで世界が熱くなっています。けれども、この温室は、さらに次の時代の都市型産業の姿かもしれない。ミカン畑の再利用という点もよい。冬場にはボイラー頼りになる(と思われる)ので本当は沖縄あたりが適地かもしれないけれど、ミウラであれば消費地に近く、輸送コストはほぼゼロと言えなくもない(消費者のほうがやってくる)。太陽と水(実際には肥料も?)があれば生産できるクリーンでグリーンな産業。特殊技能や知識・知恵を必要とする知識産業。(やや飛躍して)ミウラはミライの産業ベース!

 

詳しくは神奈川新聞4月4日号にて(ネットでは少し遅れで)。

 

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「一人市場」解説

 

「Mechanisms of metagovernance as structural challenges to levelling up in England

「レベルアップおよび再生法」の裁可(2023.10.26)から半年。施行される規定が徐々に増えてきました。法の目的そのものがある意味大風呂敷で規定も多岐に渡るため、「この法律により本当にイギリスはレベルアップして再生できるのか」のようには問いにくく、また、ぼつぼつ施行されはじめた段階ではさらにそれは難しい。一方、2024年(正確には2025年1月まで)に予定されているイギリス総選挙により与野党逆転との観測が強くあり、そのことも勘案しないといけない。

それではと、この法律の根本にかかわる「レベルアップおよび再生」の主体についての論考を今回とりあげます(Regional Studies 58(4),876-892,2024)。似たものがいくつもある中、特に新しい理論フレームにもとづき、現代世界のガバナンス分析にも迫りうる(従って日本の分析にも役立ちそうな)本論文をとりあげることにしました。あえて結論を短く書くと、「中央政府が地方の財政や政治権限や主体を細かくコントロールしようとするメタガバナンス(ここでは「コリブレーション(collibration)」という概念を充てている)がネックとなってこの法の目的の達成は難しいだろう」というものです。これは以前「白書をめぐる評価」における3人目の論者の考えを、より実証的・理論的に検討した結果となっていますが、ではどういうガバナンスならうまくいくのか、との問いにはあえて答えていません(答えられるものでもない)。

 

ここでは中心概念である「コリブレーション」にだけ注目します。コリブレーションとは、「the process of altering the weight of indivisual modes of governance to adapt to specific context」を表す造語で、イギリス(イングランド)の都市・地域計画にあてはめると、さまざまな主体の創設や補助金配分方法を、地方政府を通さずにその都度編みだして意のままにコントロールしようとしていること。しかし、ガバナンスとしては意のままにコントロールできたとしても「レベルアップおよび再生」のような本当に達成したい目的そのものは達成できないのだと。この論文では、その「達成できない」ことを物語る実証分析が各主体へのインタビューをもとになされています(designing/managing/framing/participatingの4つの切り口から)。

この「コリブレーション」という造語。新藤(2021)によれば(立命館法学399・400号)、この用語はco-libration(共振動)でありcollaboration+equilibrium(協同平衡)であると説明しています。それができればすばらしいと思う一方、実際には申請書作成時間の増大、細切れで単年度の予算、テーマの重複による非効率など、身に覚えのある状態と言えなくもありません。

 

このテーマをめぐっては、他国のガバナンスを分析して「わが国もこういう風にしたらよいのではないか」のような提言のようなものもありましたが、「コリブレーション」の構造やそのやり方を採用している考え方(イデオロギーなど)から政策目的の達成効果を評価しようとするこの論文に大いに刺激されました。

 

 

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