『ティムール以後   世界帝国の興亡1400-2000年』(都市は進化する5)

1492年にアメリカ大陸が「発見」されたあと、西洋列強がヨーロッパ以外の国々を次々と植民地にし植民都市が成長しました、、、

といったヨーロッパ目線からの世界史ではないグローバルヒストリーを語ろうとした(語ってみた)、この分野の大家による興味深い書。

2021年1月30日の日経新聞の書評が「ついに出たか」と目に止まり、いつものA社で注文するとすぐ届き読みました。

「世界の都市」というより世界史そのものですが、ようやくこういうグローバル目線の本が出たのを喜ばしく思い、本ブログ的目線でおもしろかった点などを綴ります。(なぜこの書が「ティムール以後」なのかは本書にて。国書刊行会、2020.11.10刊。)

 

第一。ヨーロッパの世界進出を、それを受ける(迎え撃つ)側からの見え方を最大限重視して叙述に努めている。ここまで徹底しようとした書は初めて読みました。(現地の歴史なども深くわかっていないとこうは書けず、このように書けるようになったのも近年のグローバル歴史学の蓄積のおかげ)

第二。最もワクワクしたのは、まず1500-1600年を検討して現地の人々の考え方を変えるほどには食い込んでいない(実際の表現を翻訳)ことを確認。次に1600-1750年を検討し「まだまだ」。さらに1750-1830年(いわゆる産業革命が起こった頃)でそろそろかと思って読み進むと「まだそれほど深くまでは影響がない」と。次に1830-1880年が検討されるも「国ごとコントロールされるほどにはなっていない」。そして1880-1900年に「アフリカ分割」が起こった時も為政者たちはさほど真剣には考えていなかったと。そうしているうちに第一次世界対戦でヨーロッパ内部で争いとなり、それが第二次世界大戦まで続き、戦後は植民地が次々に(国家としての力も脆弱なまま)独立していった、、、と、これまでの「大きな物語」を打ち消すようなストーリーが時代を追って紡ぎ出されます。

第三。日本と中国とがヨーロッパから最も遠い、最後まで食い込めなかった国として描かれ、他にも多くのところで(程度の差こそあれ)そうだったと(超要約すると)語られます。

第四。そして、「大きな物語」などなく、こういうものなんだよ、と終章(第9章)でまとめます。下巻301-302頁の記述には迫るものがあります。

第五。これで終わったらあまりに現実的な話ばかりになってしまうので、「帝国の歴史」の観点などからもまとめがあります。あくまでこれも筆者の歴史観からのものですが。

 

こう書いてしまうと面白くなかったかのように見えるかもしれませんが、本書は待ちに待った重要な書ととらえています。けれども都市・都市計画の書ではないので、世界の都市の進化を考えるうえでのプラットフォームのような書です。よく読んでみると、いろいろな都市の意味が、あるいは意味の手がかりが読みとれそうな、そんな多様な使い方ができそうな、久しぶりに出会えた貴重な図書でした。