『世界経済史概説 紀元1年-2030年』

2月20日の日経読書欄(「半歩遅れの読書術」)に出ていたこの本の解説を見て是非とも参考にしようと思い読んでみました。とりわけ以下に引用する最終パラグラフが決め手に。

「ペリー来航前の1820年、日本のGDPは米国より大きく、約1.65倍あった。人口も米国の約3.1倍。これが教科書にない19世紀日本が独立を保てた要因だ。」

アンガス・マディソン著(政治経済研究所 監訳)、岩波書店2015.6.26刊。

 

もちろん、紀元1年から2003年までの(副題に2030年までとあるが2003-2030年は単純な予測のためあまり参考にならない)世界じゅうの経済状況を「GDP」という1つの指標で語りつくした点こそがこの本の最大の魅力で、「人口」指標を並立することで「1人当たりGDP」という第三の指標も同時に示している。上記ペリー話では「GDP」と「人口」の2つを使って「独立を保てた要因」としているけれども、「1人当たりGDP」を持ち出してしまうと米国(1257ドル)は日本(669ドル)の1.88倍なので、話はできなくなる。せんじ詰めれば国民総力(GDP)は人口が大きかったために大きかったという話。

ということは、、、

ローマ時代から現代までの世界のありとあらゆる出来事が「GDP」(と「人口」)で(とりあえず)理解できそうだということで、これが本書のすごい理由です。そしてこのすごさに到達できたのはごく最近のことで、たとえば前書に比べるとローマ時代を加えて古代部分が厚くなったとか、推計方法の精度が次第に上がっているといった研究史についても詳しく書かれています。475頁(人口)と478頁(GDP)のたった2頁でもって、世界のありとあらゆる出来事に一定の説明を加えることができそうな雰囲気が漂っている。

 

推計が都市単位になっていないでしょう、精度が粗すぎますなどの不足感ももちろんあります。けれども、2003年にここまで到達したということは、あと20年もすればもう少し到達するかもしれません。そうした興味も持ちつつ、冒頭のペリー話のような仮説をたてたり、崩したり、作り直したりするプラットフォームみいなものが与えられたので、今後、グローバルかつ歴史的な都市・都市計画の(進化の)物語を考える際に、おおいに本書を参考にしたいと思います。