『今昔地図でたどる 京都大路散歩』

標記のような、京都1200年の「その敷地」の歴史をコンパクトにまとめた本が昨秋に出版されました。学芸出版社、2022.10.20発行。著者は原島広至。

 

「その敷地」といってもたくさんあるので、本書では、東西軸に沿った「一条大路」「二条大路」「三条大路」「四条大路」を切り口とし、「二条富小路殿」のようにおよそ120m四方の「1町」ごとに誰の屋敷地だったかを地図で示しつつ、そこで起こった日本の歴史史上の重要事件等を文章によって解説する、とのスタイルをとります。スケールが1800分の1と、現代の「住宅地図」と同じ位なため、親しみが湧きます(邸宅があまりに大きいところは親しみは湧きませんが、興味は湧く)。

 

これを持っていると何がわかるか。自分としてはとても驚き、さらにこの資料を使ってみようと思った例を、2つだけあげます。

1つめ。

(昨年話題だった)『鎌倉殿の13人』でいえば、平家追討の令旨をあげた以仁王の御所は三条高倉(屋敷地は四辺に接するがわかりやすい言い方にする)にあり、それを鎌倉で受け取った源頼朝が在京時代に任ぜられたのはそこから西に2町、南に1町いった三条室町の「三条南殿」を相続した上西門院の蔵人(事務官)。

2つめ。

少し時代が進んで、鎌倉時代から室町時代への変わり目を描く『太平記』の足利尊氏邸は御池高倉。その尊氏が当初リスペクトしていた後醍醐天皇が“良き日本”を構想していた(?)二条富小路殿は尊氏邸から北へ2町、東へ1町の“ご近所”。すぐに南北朝へと別れてしまいましたが、(NHK大河ドラマの中では)尊氏は最後まで後醍醐への敬意を持ち続けました。

 

京都の街は1200年も続いているので、もっともっといろいろなドラマがあったはずですが、小さな160頁弱の本ですから、主要事項に限定。索引もあるので、かなり便利です!

 

「建築・まちづくり・コミュニティデザイン」を専門とする学芸出版社からこういう本が出たということにも興味が湧きます。著者原島広至氏のこだわりが凝縮した逸品です。