竹芝桟橋(東京港) v 大さん橋(横浜港) (都市は進化する130)

接岸すると巨大マンションの壁のような容態となる現代のクルーズ船。

それはさておき、良い意味で、大型クルーズ船が市民のすぐ近くで接岸できる横浜の「大さん橋」はとても魅力的です。「大さん橋」自体が公園のようで、周囲の風景をさまざまな角度から眺められる眺望地点をたくさん持つ場所でもあります。山下公園がすぐ近くにあるばかりか、周囲には港町独特の街並みがあり、飲食できる場所やホールなどが多数あり、国内にはなかなかみられない独特な雰囲気があります。

そこで少し客観的に、なぜそのようなことが可能なのかを、港と船の「つくり」から数字をあげて検証してみます。「大型クルーズ船が市民のすぐ近くで接岸できる」ためには、港の入り口の大橋をくぐれるかということと、底をすらずに接岸できるかの2つが最低限必要です。なんとも初歩的な条件ではありますが。

 

さて、2020年。新型コロナをめぐり大問題となった、横浜港をめざして帰ってくるダイヤモンドプリンセス号。結局あのときはいつもの桟橋には戻れませんでしたが、水面上の高さ54メートル(前長290メートル、重量11.6万トン)の船で、ベイブリッジの高さが55メートルのため、それをくぐって「大さん橋」に接岸できます。この際、もう1つの条件「底をすらずに接岸できる」の方をみると、喫水(海に浸かっている深さ)8.05メートルに対して「大さん橋」のところの水深12メートルによって、「大さん橋」に大型船が接岸するあの風景が可能になっている。横浜では9.5~11メートルクラスの水深をもつ桟橋も含めるといくつもの大型船がベイブリッジの内側に同時に接岸でき、いかにも「港町」らしき雰囲気を醸し出すことができる(残念ながらベイブリッジに引っかかってしまうほどの高さをもつ船は入ってこれない(例えば、「オアシス・オブ・ザ・シーズ」の高さは65メートル! ))。

一方の竹芝桟橋(東京港)。都市に対するアクセスの類似性に着目してここでは竹芝桟橋とします。仮の話としてダイヤモンドプリンセス号を想定すると、東京港のレインボーブリッジの高さが54.6メートルのため少し微妙です。過去の話をみると、近くまできてくぐれない場合に、引き潮を待って入港した船もあったとされるので、「高さ」の側はなんとかしのぐことができるかもしれない。けれども「底をすらずに接岸できる」かをみると、竹芝桟橋のところの深さは7.5メートルとされるので、バツ。引き潮を待ってレインボーブリッジをくぐり、そこで満ち潮になるのを待ってから竹芝桟橋に向かえば理屈上近寄ることができるかもしれないけれども、、、。実際、今、竹芝桟橋に着岸する最大の船「小笠原丸」の喫水は5.7メートル(前長150メートル、重量1.1万トン)とされます。最近の東京港の旅客船関係はレインボーブリッジの外の桟橋(青海)とし、今まであった晴海客船ターミナルも廃止してむしろ中小型船向けの桟橋へと衣替えしようとしている。

 

ということで、東京港はますます大型はブリッジの外(の普段は人が近寄らない所)へと分離しつつ、市街地近くの桟橋は中小型(あるいは都市内・近距離)向けの停泊地へとシフトしている。そのような役割分担が進むなかで、「港」をどのような場所にしていくのか、とりわけ「市民のすぐ近くで接岸できる」空間をどのような場所にしていくのかのビジョンを明確にし共有する必要がありそうです。

 

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