「メイヤー」のいるCombined Authority (CA)に「統合決算」を導入

2024.12.20。マンチェスターCAと西ミッドランドCAに次期会計年度から「Integrated Settlement」を導入するとの発表がありました。
分野や年度の枠を超えて地域主導で戦略的に資源を使えるこの仕組みは、中央政府と地方との個別のdeal(取引)で縛られていた地方財政を改革しようとする新政権の重要施策です。この施策は、地方分権によって「メイヤー」のいる都市地域の権限を強化することで地域ニーズにきめ細かく対応し、地域経済を振興しようとする新政権のめざす国づくりを財政面から裏づけるものと考えられます。

18か月以上の「メイヤー」の実績があるCAからこの仕組みを適用する方針のため(CAは適用しないことも選択できる)、2025-26年度会計では上述の2CAに適用。以後、「18か月ルール」にもとづき順次導入されていくものと思われます。

 

ここでは実績が長いマンチェスターCAを例に、「統合決算」の仕組みを理解してみます。下記「資料1」がこの仕組みそのものを解説したもので、「資料2」に具体的な財源が項目別・費目別に一覧になっています。所々に「未定(TBC)」があるため合計は出せません。

[項目(費目数)] Local growth and place(5) / Local transport(11) / Adult skills(3) / Housing and regeneration(3) / Buildings’ retrofit(3) / Employment support(1) / 合計

感覚をつかむため、数字が入っている上位3費目をみると(1ポンド200円換算)、
1位 Local transportの「City Region Sustainable Transport Settlement」約431億円
2位 Adult skillsの「Adult Education Budget」約204億円
3位 Housing and regenerationの「Brownfield Infrastructure and Land Fund」約115億円

たとえばのイメージですが、3位の財源でブラウンフィールドのインフラ造成をして新交通を導入する(1位の資金)などのように、費目別の資金を「当地域の再生」という大目的のために柔軟に使える度合いが高まる、という感じでしょうか。

また、項目「Local growth and place」の内容をみると、たとえば1つめの「UK Shared Prosparity Fund」のように、前政権で細かく目的を設定して費目化されていた財源などを用いて統合的に各CAが創意工夫をしやすくなる(と思われる)。それをさきほどのLocal transportやHousing and regeneration予算と関連させながら運用すれば、中央から個々に紐づけして操作しようとするより地域は成長するはずである、との考えにもとづいていると思われます。

 

以上のことを、『イングランド分権白書』と合わせて理解することで、新政権のめざす地域づくりの方向がかなり見えてきたのではないかと思います。

 

[資料]
1. Integrated settlements for Mayoral Combined Authorities
2. Integrated settlements for 2025 to 2026

 

⇒「【研究ノート】Power Up and Planning」に反映しました。
https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2024/07/14/094331