THE MODERN CITY REVISITED

Spon Press 2000年刊。第46話です(50回までの予定)。
本日から大学院授業「市街地創造論」をはじめました。本日はイントロダクションのため、次回から内容に入ります。その次回のテーマとなるのが「近代都市計画の評価をめぐって」。
本書は、いわゆる近代都市計画の問題が痛烈に批判されたあと「見えなくなっていた」ブラジリアなどの近代都市が、本当はどうなっているのかを再訪する(実際に再訪するというより、「ちゃんと現実を見てみる」)まじめな本です。いろいろな国のいろいろなモダニズム都市・市街地が再訪されているのですが、ここでは最もわかりやすいブラジリアをとりあげます。
不動産協会広報誌の2012.1号(p10-11)で服部圭郎氏が「都市計画とは無縁の都市と化したブラジリア」と紹介しているように、本書でも、当初の計画・設計理念が受け継がれずに民間デベロッパーがそれぞれのビジネスとしてブラジリアという大都市が開発されていく様子などが詳細に描かれています。さらに最近発表された別の論文「Brasilia after Brasilia」(Richard J. Williams著、PROGRESS IN PLANNING 67(2007) 301-366)ではより踏み込んで、世界(特に西欧)各国においていかにブラジリアが無視されていたか、時代の価値によりいかに歪められて紹介されていたか、最近ではどうなっているか、どうとらえるべきか等を、主に文献レビューの方法により体系的に整理しています。
『初学者のための都市工学入門』(鹿島出版会、2000)ではブラジリアに加えインドのチャンディガールを取り上げ自分なりに表現しているのですが、やや古いモノサシによる評価になっている可能性があり、(次の版が印刷される場合には)表現の見直しも考えているところです。しかしまだ確定的・断定的に表現できるほどの材料が無く、しばらく時間がかかりそうです。
[4/11追記:『建築雑誌』2001年4月号p78-79に日本語の抄録が掲載されています。]