地域再生の新戦略

諸富徹著、中公叢書(中央公論新社)2010.3刊。
「経済のグローバル化」「資本主義経済システムの非物質主義的転回」という2つのキーワード(わかりやすく言うと、「経済がグローバル化すると国境の意味が薄くなり地域が直接グローバル化の波に晒されることになること」と「モノの豊かさよりも意味やデザインや住みやすさへの嗜好が強くなる傾向」)を軸に、これからの地域再生のあり方を理論的に示した好著。理論化の裏づけ作業として、長野県やEUにおける財政構造改革の事例が示され、内子町、長浜、横浜という3つの国内事例が分析されています。
到達した理論は、252頁に図4-1により示されています。自然資本や人工資本といったハードなストックのうえに、適切な制度・組織のもと、人的資本や社会関係資本というソフトのストックを蓄積していくことが持続可能な発展へと結びつくという内容です。特に強調されているのが人的資本や社会関係資本の蓄積。ケーススタディーが中心のため、理論というより「ありえそうなストーリー」の段階ともいえますが、これまで取り上げてきた話題(⇒第74話「包括的な豊かさ指標」など)を理論的に裏付けようとする重要な試みの1つととらえたいと思います。