都市イノベーション読本2.0
第100話は、未来都市の歴史。Daniel Brook著、W.W.NORTON & COMPANY、2013刊。 21世紀から22世紀に向かう最先端都市を考えるために、「未来都市の歴史」を、それらの特徴が最も純粋に表れると考えられるその発端にさかのぼったうえ、今日の各都市の読み方を…
6月のヨーロッパ。天気はとてもさわやかで日も長く、来週からウインブルドンテニス大会もはじまります。この会場。おおまかにみると、ハンプトンコートやキューガーデン、リッチモンドパークなどがある緑の塊の東端に位置していて、芝のコートもその緑の一角…
第22話「コクリコ坂から」に次いで2つめの映画です。第98話の今回はドキュメンタリー。 50年間ニューヨークでストリート・スナップを撮り続けてきた「The New York Times」の人気ファッション・コラムニストの実像を明らかにした快作。ビルは、毎日自転車でN…
市川宏雄著、メディアファクトリー新書055、2012.8.31刊。第97話です。 2012年1月4日に報じられたこの話題は、品川リニア新幹線駅、羽田空港国際線増便、成田と羽田の一体化をサポートする新線(都営浅草線のバイパス)建設、東北縦貫線建設、アジアヘッドクオ…
岩波書店「ヨーロッパの中世」(2)、2009.1刊。河原温著。 近年のヨーロッパ中世都市史研究の成果を踏まえ、特に、個別ジャンルの研究成果にとどまらず人類学、地理学、建築史、美術史、文学などを統合する「文化としての都市」の視点から、ヨーロッパ中世都…
Steve Tiesdell & David Adams編著、WILEY-BLACKWELL、2011刊。 都市空間を豊かにするためには、現実にその空間の多くをつくっているディベロッパーのビジネススタイルを理解しつつ、都市デザインが可能な領域や方法をしっかりと見出すことがなによりも大切…
Emily Talen著、ISLAND PRESS、2012刊。副題は「How Regulations Affect Urban Form」。 第20話のTALEN教授の近作です。一見、教科書的で一般的な内容にみえる本書ですが、ゾーニングの歴史を「Pattern」「Use」「Form」の3つの面から読み解き、その改革の動…
Ananya Roy and Aihwa Ong編著、WILEY-BLACKWELL、2011刊。第93話です。 サスキア・サッセンの世界都市論とも違い、マイク・デイヴィスの『スラムの惑星』(⇒第8話)のようなとらえ方とは一線を画し、リチャード・フロリダ(⇒第2話)のクリエイティブ・クラス論…
アンドリュー・ゾッリ+アン・マリー・ヒーリー著(須川綾子訳)、ダイヤモンド社、2013.2.21刊。 本書は、副題に「あらゆるシステムの」とあるように、レジリエンスという観点がさまざまな分野に共通する重要な規範になりうることを論じた意欲作です。本書のレジ…
楽園計画・編、ネコ・パブリッシング2013.4.1刊。 代官山T-SITEでこの1年話題をさらった“蔦谷書店”というスタイルが、地方都市に展開するための第一号店「函館 蔦谷書店」の開発意図(や思い)・経緯を綴った新しい図書です。 本年1月に着工、8月のオープンを…
2020年オリンピック開催都市が決まる9月7日まで5か月を切りました。その主要施設として注目が集まる新国立競技場。日経アーキテクチュア4月10日にもザハ・ハディド氏のインタビュー記事が載るなど、あわただしくなってきました。実は、今回のコンペで最優秀…
松本四郎著、吉川弘文館 (日本歴史叢書)2013.1.20刊。 第79話の『信長の城』は近世の入り口までの城下町という形態の誕生を描いていますが、そのあと、城下町という都市形態がどのように確立していったかをまとめた基礎研究書。近代に入り近代都市計画によっ…
第88話。トリエンナーレのスタイルとなってから第2回目の瀬戸内国際芸術祭がはじまっています。今回は、春、夏、秋の分散開催。公式ガイドブック『瀬戸内国際芸術祭2013』(美術手帖2013年3月号増刊)を片手に、さっそく春の瀬戸内の島々を回ってきました。 行…
フェリックス・ロハティン著(渡辺寿恵子訳)、鹿島出版会2012.12.15刊。 副題には「アメリカをつくったインフラ物語」とありますが、「インフラ」にはいわゆる道路や鉄道、運河等のハードだけでなく、本書では領土の買収や復興金融公社、国民に開かれた大学な…
国立歴史民俗博物館・玉井哲雄編、山川出版社、2013.3.10刊。 日本の都市の成立やその進化過程を、アジアの文脈で位置づけようとする最新の成果。 「唐の長安に学んで日本に平城京や平安京をつくりました」との素朴な理解をはるかに超えて、古代世界システム…
安田政彦著、吉川弘文館(歴史文化ライブラリー361)、2013.2.1刊。 「いつの時代にも災害からの復興は容易ではなかった」が、「どれほどの激甚な災害が起ころうとも、人々は懸命の努力をもって復興を果たしてきた」(プロローグより)との視点から、淡々と災害…
『平清盛』で低調だった視聴率を取り戻したNHK『八重の桜』で、会津藩が京都守護のため三条大橋を渡り幕末の不穏な空気に包まれる京に入りました。1862年のことです。戊辰戦争後、首都機能が東京に移動し衰退した京都の再生・近代化を担ったこの琵琶湖疏水。…
23日のBS朝日でたまたま遭遇した番組。ですが、内容はたいへん興味深く、「こういう視点も都市イノベーションにピッタリ」との思いに。ここで取り上げられていたのは、マーストリヒト、オーハイ(ロサンゼルスの西北西)、ポルト、東京代官山の4か所の書店。 h…
Ellen Dunham-Jones and June Williamson著、Wiley 2011刊。 副題は「Urban Design Solution for Redesigning Suburbs」。本題の「retrofit」の日本語を調べてみると「旧型式の機械を改装・改造して新型式にすること」。 「updated edition」とあるように、…
Nicholas A. Phelps and Fulong Wu編、Palgrave Macmillan、2011刊。 これまで、「中心部−郊外部」という枠組みを前提として「郊外化(suburbanization)」をとらえてきたことに対して、最近のアーバニズムがそうしたとらえ方だけでは説明できないのではないか…
2月2日の新聞各紙で報じられた奈良県桜井市の纏向(まきむく)遺跡発掘の最新の成果。邪馬台国の卑弥呼の居館の一部とも考えられていた4棟目の建物は存在しないことが確認できたこと、しかしながら残りの3棟を取り囲むような形で溝が掘られていることがさらに…
第79話の今回は、はじめての切り口です。岩波新書2013.1.22刊。 都市イノベーション読本ではこれまで知らず知らずのうちに、今ある都市をどうイノベーションするか、という観点が強くなっていました。それに対して本書は、多くの日本の都市のルーツといえる…
昨年暮れ、関西の研究者仲間に「最近、大阪では何が話題になっています?」と尋ねてみると、新市長のもとで打ち出された御堂筋の規制緩和の検討が第一にあげられました。 やや意外だったものの、「維新」の1つがそうだとすると、、、となぜか大阪駅のことが気…
諸富徹著、中公叢書(中央公論新社)2010.3刊。 「経済のグローバル化」「資本主義経済システムの非物質主義的転回」という2つのキーワード(わかりやすく言うと、「経済がグローバル化すると国境の意味が薄くなり地域が直接グローバル化の波に晒されることにな…
2013年です。「都市イノベーション」している事例を、図書を中心に引き続き見つけ出していきます。第76話となる今回は、1月4日の日経新聞「視点2013」15頁に出ていた、とあるクラウドソーシング会社社長の都市イノベーションビジョン。 この記事では「村式」…
第75話。副題は「Daniel Burnham and the Remaking of the American City」。CARL SMITH著、The University of Chicago Press 2006刊。 都市計画という分野が未確立だった20世紀の初頭に策定された、都市計画の名作といわれる『The Plan of Chicago』の策定…
CHRISTOPHER KENNEDY著、UNIVERSITY OF TORONTO PRESS 2011刊。副題はUrban Wealth and Economic Growth。 都市が繁栄するためのインフラストラクチャーの重要性を主要な着眼点としつつ、大都市間の競争と都市内部の富の蓄積を歴史的に読み解いたチャレンジ…
「そこまでやるの?」と驚くとともに時代の変化を感じるのがこの話題。「話題」というと皆が取り上げているような言葉ですが、ここではあくまで「都市イノベーション読本」での話題。 そもそも出島の再生事業がはじまったのは1951年(昭和26年)と、60年以上も…
再開発事業で建てられた山鹿市中心部のビルの一部を取り壊して、明治時代に建てられ親しまれていた木造の温泉施設を復元、との9月27日の読売新聞の記事に仰天し「すぐに見に行こう」と思ったのは2ヶ月前のこと。11月下旬にようやく現地を訪れることができま…
W・ブライアン・アーサー著(有賀裕二監修/日暮雅通訳)、みすず書房2011.9.22刊。 本書の内容は原題の「THE NATURE OF TECHNOLOGY What It Is and How It Evolves」そのもので、日本語訳のイメージとはかなり違います。とはいえ、原題のままでは目に留まらな…