ローカリズムの3つの特徴

Town Planning Reviewの最新号(84(5))の巻頭コメンタリー(著者はDavoudi教授とMadanipour教授)では、今回の「ローカリズム」がネオリベラリズムをさらに推し進めるものであるとの観点から3つの特徴を抽出しています。a)個々人をリジリエントで(生存競争を生き抜き)自己管理し企業的なものであるととらえていて、市民であり社会の一員である個人とはあまりとらえていない。b)国が指標を設定して管理する方法(technologies of performance)をかなり廃止して、かわりに近隣が代理人として主体となる方法(technologies of agent)に変更している。ただし開発に対して「ノー」とは言えないように、上位計画には整合していなくてはならないという形でtechnologies of performanceのスタイルは維持している。c)近隣が社会の中の必須な主体となることによってノンローカルな声が通りにくくなるうえ、必ずしも最適とはいえない近隣が市場の主役として期待されることには弊害がある。
2011.8.11のAllmendinger教授らによる批判的論考による整理[1)複雑な社会だからこそ多様なステークホルダーのチェックを受けて中央で議論し決定しているのに、ローカル化を進めすぎると分割され、そうした声が反映しづらくなるおそれがある、2)代議制にも問題はあるとしても、直接民主主義を強めると力のあるところのみメリットを享受し、それ以外は中央の財源カットの格好の材料になる、3)ユビキタスローカリズムでなく選別的なローカリズムが進み近隣間の分裂が進むおそれがある、4)「大きな社会」とは聞こえはよいが、結局は保守党が常に掲げる「小さな政府」のための方便にすぎない]と合わせると、厚みのある議論として整理できそうです。

[参考]本ブログのイギリス最新都市計画「★統合ファイル