THE NEOLIBERAL CITY

JASON HACKWORTH教授が准教授だった頃の2007年に出版されたこの図書は、1989年のベルリンの壁崩壊後に「ひとり勝ち」しているネオリベラリズムにより都市がどのような影響を受けているのか、それを動かしているのはどのようなメカニズムなのかを深く掘り下げた、淡々と掘り下げた、シャープに掘り下げた、他に類をみない好著です。
「都市イノベーション読本」に何度もとりあげようとしてできなかったこの図書を、今回紹介することになったきっかけは、Progress in Planning最新号(vol.90、1-37、2014)に掲載された「The limits to market-besed strategies for adressing land abandonment in shrinking American Cities」という論文です。本ブログで最近取り上げている「土地放棄」について、先日とりあげた『The City After Abandonment』とは異なるアプローチで分析していることに興味をもったからです。そもそも『The City After Abandonment』は幅広い著者の論文を編集したもののため比較はできないのですが、HACKWORTH教授(トロント大学)のこの論文は、『THE NEOLIBERAL CITY』で展開していた議論を、「土地放棄」についても敷衍して議論した形になっていてとてもユニークです。
煎じ詰めると、土地放棄が深刻な多くの都市で行われている「ランドバンク」制度に反対する勢力が最近力を増しており、その最前線を「market-only land abandonment policies」として分析しています。デトロイトに加えてゲイリー(gary)という問題が深刻な都市が分析されているのですが、ネオリベラリズムの実態が構造的にとらえられその枠組みの中でもがき苦しむ問題都市の姿や、「market-only」の結果自らの首をしめているネオリベラリズムの矛盾を、深く、淡々と、シャープに描き出しています。
デトロイトやゲイリーの問題が、「market-only」であるがゆえのものなのか、については断定できない形で議論は終わっていますが、こうした「土地放棄」の最前線における政府と市場(とコミュニティ)の関係のあり方について、深く考えさせられる内容です。
振り返ると、2007年の『THE NEOLIBERAL CITY』の最終章において筆者は、ネオリベラリズムに対抗(というより抵抗)できる可能性のある5つの流れを吟味していました。7年後の2014年にこれらがどうなっているのかを再度吟味することも、じっくりものを考えるうえで有効かもしれません。