広域レベルの計画主体も計画そのものも廃止されたあとのイギリス(正確にはイングランド)において、ロンドンだけが公選市長の権限を強化し「世界都市」として目立った行動をとり、人口も史上最多を記録しさらに躍進しています。
そのような中、「Combined Authority」という仕組みを使っていち早く広域行政機関を立ち上げたマンチェスター大都市圏(GMCA)において、その市長を選ぶとともに、中央政府から大幅な権限移譲を受けようとする動きが出てきました。
http://www.agma.gov.uk/cms_media/files/item_6_gm_devolution_agreement1.pdf
これは2014年11月3日にGMCAと政府の間で交わされた協定書にもとづくもので、これまでも自治体ごとに「City Deal」等を用いて中央から権限や資金を獲得する流れは拡大してきていたのですが、大都市圏レベルで市長を選び大幅な権限移譲等を受ける動きはロンドンを例外とするとはじめてのものです。
そのように表現すると権限移譲がとても進んでいるように見えますが、実は、サッチャー首相が大改革を行った1980年代の半ばに、労働党が“跋扈する”大都市圏自治体は言うことを聞かないのですべて廃止されたのでした。
そういう目で今回のこの動きをみていくと、まずはロンドンは世界から注目されるドル箱なのでできるだけその力が発揮できるよう権限を与え、その他の大都市圏は、それらから提案される企画内容をじっくり評価しながら中央政府の考えの範囲内で個別に取引しながら徐々に権限や財源を与えていこうとするものと読み取れます。
マンチェスター大都市圏においては、市長はCombined Authorityの「11番目」
の席を占めるにすぎません。「11番目」というのは、大都市圏は10の市で構成されるためその10の上におさまるのではなく、11番目のメンバーになるとの形です。ロンドン市長は33の区の上に強力な権限をもちかなり自由に動けるのと比べると、やや見劣りがします。文書では一応「わがマンチェスターではロンドンのような市長のタイプではなく我々の地域独自のやり方でいくのだ」という書き方になっていますが、行間を読むと、政府とのやりとりのなかでそのような形におさまったのではないかと感じます(考えすぎ?)。
「1歩前進」というか、「1歩巻き戻し」というか、歴史をどの時点から読み取るかで言い方は異なりますが、並行して、廃止されてしまった大都市圏レベルの戦略計画づくりもはじまっています。
http://www.agma.gov.uk/what_we_do/planning_housing_commission/greater-manchester-spatial-framework/index.html
http://www.agma.gov.uk/cms_media/files/greater_manchester_spatial_framework_dpd_260914_publish1.pdf
実際にこの地域の市長が選ばれるのは2017年頃になるようです。