近隣計画の運用(その7) 開発抑制的政策で裁判になったTattenhall(West Cheshire)

レファレンダムを通過した近隣計画については、以下のURLの「News」欄のArchiveにて、すべて把握することができます。
http://www.ourneighbourhoodplanning.org.uk/news
これによると、2015年1月時点で44の近隣計画がレファレンダムを通過しています。
本ブログの「ミニ特集」において既に第1号第2号第3号第6号等を紹介しましたが、制度導入後初動期のその他の事例もやはり気になります。そこで、本日から1つ1つの近隣計画を、レファレンダム通過順に読み解いていきます。
内容そのものの紹介というより、その近隣計画がなぜ必要だったか、どこに特徴があるか、近隣計画づくりやその後の運用において特別な注目点はないかなどのトピックを中心に、探訪的精神(?)で味わっていきます!

初回はTattenhall。近隣計画第4号です。歴史的市街地で有名なチェスターの南東に13キロほどいったパリッシュです。
この事例の最大の話題は、近隣計画に開発抑制的な内容が盛り込まれているため裁判沙汰となったことです。
レファレンダムはそのような中、実施され、通過しました。2013年9月4日のことです。
(ニュース)http://www.ourneighbourhoodplanning.org.uk/news/2013/10/29/Record_referendum_vote_as_Tattenhall_says_massive_Yes
(近隣計画) http://www.cheshirewestandchester.gov.uk/your_council/policies_and_performance/council_plans_and_strategies/planning_policy/neighbourhood_planning/tattenhall_and_district_neighb.aspx

このパリッシュでは民間住宅開発がかなりの量計画されているのですが、近隣計画の最初の「Policy1」で、2010-2030年の間は、Tattenhall村にすぐ隣接するところでの30戸までの開発は許容されるなどとしています。民間事業者らはこれを不服として争ったのですが、「住宅開発がこのポリシー1によっては達成できないとする証拠はない」として不服は退けられ、それを受けて近隣計画は2014年6月4日に正式に採択されました。
「近隣計画の運用(その6)」のFerringの例も若干そうだったのですが、民間事業者の開発を抑制しようとする近隣計画は、その程度や方法によっては裁判で負けることもありうること、しかしながらこのTattenhallの政策は認められていて、それには政策の正当性を示す証拠(住民アンケート調査によりどの程度の開発まで許容できるかの結果を示している)があること、レファレンダムの投票率が高く(51.9%)、賛成率もきわめて高かったこともプラスに作用したものと思われます。さらに技術的にいえば、どのような開発であれば認められるかについて、この村のニーズやランドスケープ等の根拠にもとづききめ細かく政策がつくられているため、さきの引用文にあったように「住宅開発がこのポリシー1によっては達成できないとする証拠はない」との判断が得られたものと考えられます。