BIDの進化と近隣計画

本日手にしたPlanning7月3日号に、中心市街地での都市計画の今後を左右する重要な記事が出ていました(p7)。読んだだけでは内容がよくわからないため、直接原文書を探し出し、全体像がわかってきたのでまとめてみます。
この記事は、先月6月19日に協議期間が終了した「Government Review of Business Improvement Districts」という協議書に寄せられた各界からの反応をまとめたものでした。特に、「現在イングランドに200以上設立されているBIDを、自動的に近隣計画の策定主体にする可能性を政府はさぐっているのだけれどもどうですか?」という問い(Question11)に対して賛否両論があったことをメインの話題にしてこの記事は書かれていました。

協議書は次のURLにあります。
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/418008/BIDs_Consultation_Document.pdf

しかしこの協議書のQ11はより突っ込んだところでの政府側の問いかけであり、協議書そのものは、投票により設立されたBIDというまちづくり機関の進化を実際的に模索した重要な政策提案となっています。特に、ビジネス界だけのいわば身内の投票により可能になったビジネス・商業地区のエリアマネジメントに欠けているいくつかの要素を補強することによって、その地域の開発の方向性をも定める近隣計画の策定主体となる資格を与え、もって、中心市街地再生を、単なる運営やイベントのみならず、都市計画として強力に推進させようとする政府の意図が示されています。

政府提案を簡単にまとめると、以下の4つです。
第一。透明性の確保。BIDの活動成果を(一部の他法令にかかるBIDを除いて)現在報告する義務がなく不透明な状態だが、報告義務を課すなどして透明性を増す。(Q1〜4)
第二。地方自治体との連携強化。そのために、BIDのより統一されたサービスの明示や情報公開、BIDの都市計画委員会への参画など。(Q5〜7)
第三。地方自治体が徴収しているBIDエリアの税金をBID自らが徴収できるようにすることなど。(Q8)
第四。近隣計画関係。現在、BIDでもあり近隣フォーラムでもある主体が4つある(Bankside,South Bank,Central Ealing,Mayfair)。しかし基準を緩和してもっとそうなりやすいようにする。(Q9,10,12)
さらに200以上あるBIDが自動的に近隣計画の策定主体ともなれるようにするのがQ11の問い。
第五。BIDの設立手続きの改善。BIDをより強力な主体とするため、設立のための協議手続きの明確化、投票権の無いビジネス主体への投票結果の周知などの改善。(Q13〜19)
その他、Q20,21関連の問いが続きます。

6月19日に協議期間が終わったため、近々、意見の概要と政府の方針が示されるものと思われます。
なかには既に規則が改正されてBIDが強化されているものもあり(地方自治体の提供しているサービスを肩代わりする権利(Community Right to Challenge⇒いずれ記事としてとりあげます)を行使できる主体になったこと/Proprerty Owner Business Improvement District制度の導入など)、今後、法改正、規則改正、ガイダンスなどにより次々と具体策が実行段階に移ってくるものと思われます。

[関連記事]
・「BID(Business Improvement District)と近隣計画の関係」(2013.7.11記事)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20130711/1373509016
・「ビジネス近隣計画がはじめてレファレンダムを通過しました」(2015.5.9記事)
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20150509/1431167852

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)