近隣計画の運用(その14):Balsall Heath近隣計画のレファレンダムへの長い道のり

2012年9月12日の記事で、「近隣フォーラム第1号」に認定されたものの近隣計画のタタキ台に対して50%以上の「yes」を得るにはほど遠い現実に直面しているBalsall Heath近隣フォーラムの様子を伝えました。Balsall Heathはバーミンガムの都心から3キロほど南にいったところの、さまざまな都市問題がみられる地区です。

あれから3年。
苦労の末、ようやく来月10月8日に投票が行われる運びとなりました。
この間の経緯をみることで、ロンドンのみならず、大都市の既成市街地で近隣計画を策定しようとした場合に共通しそうな悩みや課題・経緯をラフに抽出します。(ロンドンの状況は(その13)で。)
第一。地域側に人材等の資源が不足している一方、抽出した「地域課題」に対して既存の市役所の各部局が積極的にかかわろうとしないこと。(初期段階の協議では、このギャップを埋めることが中心。2011-2012頃)
第二。地域から出てくる課題の多くは「近隣マネジメント」事項が多く、土地利用計画のポリシーに限定されるディベロップメンプランとして近隣計画を組み立てるためにかなりの時間を要した。地域側ではなぜ我々の考えが表現されないのかと不満になり、行政側からはそのような事項は近隣計画に含められないとなる。(結局、提案のおよそ半分は「ポリシー」ではなく「プロジェクト」として記述することに。2012-2014まで。)
第三。ようやく「プロジェクト」に落ち着いた事項を第6章としてとりまとめた計画案を公表し(2014年6月)、第三者である審査官による審査を経たところ、「プロジェクト」が計画本文の第6章にあるのは適切でないので、付属書類(Annex)にするように勧告された(2015年3月31日)。勧告された側のバーミンガム市ではこれを全面的に受け入れたものをレファレンダムにかける計画案として公表した。なお、勧告内容はこの点以外にも多岐にわたり、基本的にすべて勧告を受け入れ書き直したのが最終案。
第四。計画内容を実現するための財源としてCILが記述されているのは最近の傾向と共通していますが、この地区ではさらに、最近政府がパイロット的に10地区で実施している「Neighbourhood Budgeting」への期待が述べられていて注目されます。

近隣計画が速くできた地区に注目するのも1つの方法ですが、本事例のように、大都市部の既成市街地において苦労しながら投票まで到達したその経緯に注目するのも重要と感じます。
10月8日の投票、どうなるでしょうか。