近隣計画にからんだ不服申立てを大臣が直接判断しています

近隣計画の運用(その10)に本日追記した事柄に関連して、その背景にあるイギリス都市計画の「真髄」のようなものが見えてきたので、独立した記事にします。
近隣計画の運用がはじまり、地域住民らがその地域で受け入れるべき開発(特に住宅開発)の良し悪しについて強い影響を持てるようになりました。とはいえ大臣としては広域的な住宅ニーズに対応すべき責務ももつため、2014年7月10日からとりあえず1年間、10戸以上の住宅開発提案が不許可となり不服申立てされたもので近隣計画がらみのものを、インスペクターの判断に任せずに、自ら判断する(地方計画庁の不許可判断を覆すか、不許可のままでよしとするか)こととしたというものです。インスペクターに任せずに大臣自ら判断したものの数は2007年を例にみると、不服申立てが27000件あり、うち110件だったということで、1%にも満たないのですが、例えば国の利害が大きくからむような、大臣自らが判断すべきものがなかにはある、という感じです。近隣計画のような新たな政策による不服申立てを「モニタリング」するようなこのような方法は自分自身はじめてみるのですが、「とりあえず1年間」とされた期間は、さらに半年ずつ2度延長されているようで、(少なくとも)2016年の7月まで続きます。

近隣計画の運用(その10)に追記したのは、クリングルフォードで不許可となった650戸の開発が大臣の判断で条件付許可となった(不許可となったものを回復させるという意味で「recovery policy」と言われる。この「recovery」という概念は、地元権限を大臣が取り上げてしまう「call-in」とは異なり、不服申立てとなった不許可案件を通常ならインスぺクターが判断するものを大臣が直接判断するものをいう)というものでした。
とはいえすべてが「recovery」されるわけではなく、Planning2016.1.15号(p36)によると、1度目の6か月の延長期間で9件の大臣判断があり、うち7件が「recovery」されたようです。地元からみると「2勝7敗」といった感じでしょうか。

近隣を都市計画の重要な主体とするという大きな政策変更(Localism)の初期段階で、こうして国が直接判断する余地を残しておくという方法そのものが興味深いところです。半年ずつの延長期間がどこで終息するのかなども見どころかもしれません。

[参考]
Localism and Planning (イギリス最新都市計画統合ファイル)