ロンドンにおける近隣計画の最新動向(1):各区のマスタープランとの関係

近隣計画のレファレンダム通過件数が300件を超えました。100件から200件までに9か月、200件から300件までに9か月ということで、普及のスピードは衰えていません。(下記『Notes on Neighbourhood Planning』19号(2017.3発行)の最終頁参照)
https://www.gov.uk/government/publications/notes-on-neighbourhood-planning-edition-19

大都市ロンドンの進捗状況が芳しくないことについては何度か本ブログでも紹介しましたが(⇒関連記事)、ここにきて、その原因の一端に迫る客観的調査結果が公表されました。その仮説は、「近隣計画が普及しない原因は、それが公式の都市計画マスタープランの一部であることを上位計画できちんと説明していないからではないか?」というものです。(以下がその報告書pdf。サイトはhttp://www.neighbourhoodplanners.london/)
http://media.wix.com/ugd/95f6a3_6d2d4b5b624c44fd963fedcea470d28d.pdf

各区のマスタープランの定性的分析のため、例えば普及度合いと記述度合いの統計的分析のようなものではありませんが、1つの見方として興味深い結果が得られています。
まず、各区のマスタープランにおける近隣計画の位置づけを分析。マスタープランが近隣計画制度創設後に策定されたものか、その前の時代の古いマスタープランのままかによっても区別しています。位置づけがはっきりしている度合いにより4つに分類。
第一カテゴリーは、近隣計画をしっかり位置付けている区。クロイドン、ウエストミンスター、カムデン、サザク、タワーハムレットの5区が該当します。2017年末に採択予定のケンジントン&チェルシーも加えると6区に。
第二カテゴリーは、近隣計画をいくらかは位置付けている区。15(13区に加え2つの開発公社エリア)が該当。
第三カテゴリーは、ほとんど位置づけないか全くふれてもいない9区。以前、「近隣計画」ではない別種のまちづくりが進んでいるからではないか、などの仮説を検討しましたが、さらに分析するとおもしろいかもしれません。この報告書でも、リッチモンド区などで独自の「ビレッジプラン」等の取り組みがあると指摘しています。
第四カテゴリーは、区のマスタープランが旧制度の頃の古いものである5区。その改定作業を待たないと判定はできないとしています。

普及が遅い原因として他にも、ロンドンプランにも記述が無いこと、近隣計画の審査プロセスにおける技術基準が無く判断方法がばらばらであることなどを指摘。さらに、居住者組合やコミュニティグループなどに対しても、都市計画マスタープランの協議過程において積極的に近隣計画制度そのものをマスタープランに位置づけるように声をあげるべきと提言しています。

[関連記事]
・近隣計画を立てる気配の無い自治体はなぜそうなのか?
http://d.hatena.ne.jp/tkmzoo/20160302/1456880824