connectivity matters more than density

先週末に「新型コロナと都市計画」の校正が終わり編集の方に送りました。とはいえ、新型コロナについてはわからないことだらけで、その「わからないこと」の中にもいろいろな次元のわからないことがあるので、「と都市計画」にもっていくにはピースが足りないことを痛感しました。

 

そもそも「感染者数」というのは居住地ベースでカウントされている。その方がたとえば横浜から東京都千代田区に通っていたとし、千代田区で感染した場合も横浜市の感染者にカウントされる。千代田区の居住人口は少ないので感染者も少なくみえる。けれどもこの方は中央区や港区、新宿区などで感染したかもしれず、勤務地千代田区でカウントすればよいというものでもない。そもそもどこでどうやって感染したかもわからない場合が多いのだし。しかたなく「居住地」でカウントするしかないね、ということで数字になっている。しかも、デリケートな問題なので、(こうではないかと)わかっていることがあっても公表されない。よって「エビデンス」というものがきわめて得られにくいか全く得られない。そのような難しさを今回の校正で改めて認識し、結局、[補注]をつけて限界を示すことしかできませんでした。

 

そのように考えると、1つ1つの研究成果は貴重です。

Shima Hamidiらによる「Does Density Aggravate the COVID-19 Pandemic?」(Journal of the American Planning Association 86(4),495-509)は、上記のような「エビデンスがつかめない」COVID-19の都市への影響をいくらかつかみかけた貴重な報告となっているので、やや主観的に少し紹介します。『コロナで都市は変わるか』(矢作弘ら著、学芸出版社、2020.12.10刊)にもp47-48あたりに紹介されています。

 

一言でいうと、connectivity matters more than density。上記の「感染者」や「感染場所」「感染の仕方」がわからないというのは、「大都市圏という、膨大な人々が日々きわめて密接にconnectしている状態」が感染数に効いているということを、今のところ統計的な傾向としてしかとらえられない、ということに近い。ポジティブに表現すれば、この論文はそのような傾向などを示すことができた。

あとは、「大都市圏」に着目して議論するのか、「感染場所」か、「感染の仕方」か、によって議論する方向が大きく異なってくる。しかしエビデンスがあまりに無いので推論や信念などがどうしてもはさまってしまう。Hamidi氏らの議論も、「統計的傾向」はさておき、提言的部分はこうした限界が否めません。

 

とはいえ、私たちにできるのは、こうした限界の中で1つ1つのエビデンスを積み上げ、アイデアを磨き、実践を積み上げながら修正していくことなのでしょう。「新型コロナと都市計画」を含む図書の刊行は年明けの予定です。

 

 

 本記事を「ポスト・コロナ社会の新ビジョン」に追加しました。

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2020/05/05/121753