「企業、コロナで都心脱出」

5月30日の日経朝刊トップ記事に、「企業、コロナで都心脱出」との見出しで、かなり客観的なデータにもとづく「都心脱出」の様子が示されていました(国税庁の「法人番号公式サイト」を用いて2019年1月以降に移転登記した法人39万件を対象としていろいろな分析をしている)。東京区部から外部に「移転」した法人数は2020年4月以降に約6700社(←これが2020年度の数字。2019年度より24%増。なお、2020年度の東京区部への転入は約4600件)。このうち最多の「脱出」先は横浜市で約770社。いくつかの自治体や事例が紹介されるなかで、最も「脱出」を受け入れた横浜市の条例改正(転入企業への助成)の話などが紹介され、記事としてはよくできていると思いました。

 

さて、ここからが本題。一応、上記したようなデータの定義は理解したうえで、「横浜市は巨大都市で東京にもすぐの場所だから、総数で多いのは当然でしょ」。

 

そこで、市町村人口を勘案するため、「10万人当たり移転数」を出してみることにしました(2021年4月時点の人口で割る)。新聞記事には実数まで出ていないため、同じ記事のネット版情報で補足してみると、総数上位10市(10位が同数のため11市)の10万人当たり移転数は以下のとおりです。(アバウトに計算)

    移転数  人口(万人) 10万人当り移転数

横浜市  772   376    21

川崎市  365   154    24

埼玉市  260   132     20

川口市  188    59     32

千葉市  159    98     16

市川市  131    50     26

船橋市  119    64     19

武蔵野市 106    15     71

八王子市  97    58     17

調布市   91    24     38

松戸市   91    49     19

 

意外なことにどの市も似たり寄ったりで、武蔵野市の71が突出。調布市と川口市がやや高いといえば高い、という結果となりました。調布も川口も東京23区に隣接しているので、新宿から杉並に移転した企業などとも比べないと、本当に高いといえるかどうかはわからない。武蔵野市の「71」という数字だけは「高い」とみてよいかもしれない。

そういう意味では新聞記事に示されたマル印の大きさからみて、軽井沢町のマルは「100」、人口は2万人なので指数は「500」。概算ではありますが、これはかなり高い。鎌倉市はデータが「73」と出ていて17万人なので43。東京23区からの距離も考えればまあまあ高い。ちいさな町ではたとえ1件でも指数は大きくなるので(人口5千人の町に1件移転してくれば指数は20で横浜並み)、全国データも見てみたいところです。

本当は、夜間人口の「移住」などともからめてこうしたデータを分析すれば、ある限られた時期のデータではあるけれどもおよその傾向はつかめるはずです。さらに従業員数などもわかるともっとよいです。

さきほど「横浜市は巨大都市で東京にもすぐの場所だから、総数で多いのは当然でしょ」と一蹴してしまったかのように見えたかもしれませんが、「772」の移転が横浜都心に集中していたのか、(労働力の多い)郊外に案外多くちらばって立地したかは興味の湧くところです。

 

 本記事を「ポスト・コロナ社会の新ビジョン」に追加しました。

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2020/05/05/121753

 

 

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