昼夜間人口比と新型コロナ(その2)

東京でまた「緊急事態宣言」です。昨夜のWBS(テレビ東京)では、東京都心部の空室率がさらに高くなる中で、「オフィス」の位置づけを変え平面計画を一部刷新した2つの企業の事例が紹介されていました。

「外へと向かう「新近郊」の動向に興味が引かれる一方、新型コロナ下で都心部に住居を移す動きも旺盛と言われ、アフターコロナに向けて「都市構造」や各場所での「土地・建物利用構成」が大きく変化しそうな予感がします」とした2020.12.18の(その1)では、東京港区を例に、昼夜間人口比が徐々に小さくなっていると、2015年までの動きを以下のようにあげていました。

 

         昼間人口   夜間人口   昼/夜比 

1940   396552     336312    1.179

1955   380542     251884    1.510

1965   536379     235333    2.279

1975   674821     209492    3.221

少しあけて

1995   849786     144233    5.892

2005   908940     185732    4.894

2015   940785     243283    3.867

 

2020年のデータも得られるようになり、この6月に改訂・公表された『港区低炭素まちづくり計画』(⇒資料)の中に将来人口推計も掲載されているため、「テレワーク」の要素も入れながらラフに「これから」の都市構造の変化を考えてみます。

 2020   973607     260284    3.741

 

まだまだ高いです。

けれども「973607」のうちテレワークで実際にはオフィスに来ていない割合を勘案しこの数字が20%減るとすると、「778886」。

2020(テレワーク勘案)   778886     260284    2.992

2倍台になりました。バブルで夜間人口が追い出されてしまった1990年代と比較すると隔世の感があります。昨夜放送のWBSで紹介された1事例目は(オフィスは多摩地域でしたが)ダ~~ッと並んでいたオフィス机の一部を撤去して共同作業型のゆったりしたスペースを多様に確保。2事例目の渋谷のオフィスは4000冊の本棚に囲まれた「考えられる」オフィスに。「数字が20%減る」かどうかはさておき、ハイブリッドな働き方が定着・拡大していくと、「オフィスに勤務している人の人数」の数え方も変えないと現実とズレていきます。

『港区低炭素まちづくり計画』に出ていた2025、2030年の夜間人口(予測)の数字を使い、頭打ちになってきた昼間人口は「778886」のままとすると、

2025(テレワーク勘案)   778886     278846    2.793

2030(テレワーク勘案)   778886     309229    2.519

 

だいぶ下がってきました。「毎日長距離通勤」者はだいぶ減り、新しいオフィスではよりクリエイティブに価値が生まれ、ハイブリッドな勤務形態によってワーク/ライフバランスが多様になり、郊外も変わる。

これまで「夜間人口」は無チェックで議論してきましたが、2020年の「260284」、2025年の「278846」、2030年の「309229」という数字の多くはビジネスも同時にやっていたりテレワークで週の何日かは家で仕事をしている人たちです。そう考えると、これまで「人」や「世帯」をベースに考えていた「ワーク/ライフバランス」という概念は都市の土地利用にもあてはめて考えたり分析したりカウントする必要がある。

 

最初からかなり長めに宣言された「緊急事態」。都市の進化をまた一歩促すことになりそうです。

 

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 本記事を「ポスト・コロナ社会の新ビジョン」に追加しました。

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2020/05/05/121753

 

 

[資料] 『港区低炭素まちづくり計画』(2021.6改訂・公表)