リニア新幹線開業に伴う「60分圏人口」

今週届いた『日本不動産学会誌』(No.137、2021.9.29発行。特集「多元的リスク時代の新しい国土利用」)の中に「多極連携型国土形成と国富創出」と題する論説があり(p54-59)、その前半で、リニア長野県駅(飯田市)からみたリニア各駅への所要時間などにつきデータが示されているので、少し綴ります。

1つめは、長野県駅からの短縮時間が長い順に、神奈川県駅(相模原市橋本)が284分から35分に249分短縮。品川駅が275分から45分に235分短縮。1ケタ違うといってよいほどの激減です。

2つめは、このように各リニア駅にケタ違いに早く到達できるため、長野県駅からの「60分圏人口」をリニア開業前後で比較すると、約34.5万人が800万に「ケタ違い」どころか「2ケタ違い」に近いくらい増加する。60分のうちリニアに35分(神奈川県駅)、45分(品川駅)乗っているので、それぞれ25分、15分しか残りがなくこれだけですが、たとえば「75分圏」などと少し増やしただけでも「2ケタ違い」に近づくものと思われます。

 

この論説ではこうした変化に伴い、「東京や名古屋などの大都市がストロー効果によって他の地域から転入者をさらに増加させるかもしれないが、その反対の流れも生じる可能性はある」(p56)とかなり慎重な表現ですが、このチャンスを誰がどう生かせるか。

7月に改訂された「2021年度版 リニア推進ロードマップ(飯田市)」をみると、5月時点の本体工事および関連工事日程が20項目に分けて示されていて、たとえばJR東海の「駅部区間」工事は2021年10月時点で用地協議もかなり進み年内には準備工事がはじまる予定。飯田市が行う「リニア駅周辺整備」は用地協議と実施設計が進み2022年度に入ると埋蔵文化財調査を経て土木工事へと向かう。問題山積の静岡県区間南アルプストンネル工事があるので、開業は「2027(R9)以降」と表現されています。

 

10月11日に開講する「地域創造論」のテーマは“次世代の横浜・神奈川地域を素描する”。2035~2050年頃のビジョンを検討します。「多極連携型国土形成と国富創出」という課題とも無関係ではありません。

 

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