『アケメネス朝ペルシア - 史上初の世界帝国』

紀元前525年から同330年の「アケメネス朝ペルシア」についての新書が9月25日に出版されました(中公新書2661。阿部拓児著)。読んでみると、「歴史(西洋史)とは何か」についてかなり突っ込んで書かれていて、「とはいえ、やはりヨーロッパからアメリカに至る都市の歴史です。たとえば日本を含むアジアのことは、メソポタミアなどが出てくる古代を除くと、まったくというほど出てきません。ではどこにそのような図書があるかというと、残念ながらまだそのような作品は出ていないのではないかと思います。いないとすると、そのヒストリー(ストーリー)をつくることがまさに都市イノベーション開墾。けっこうそれはたいへんです」(本ブログ「【in evolution】世界の都市と都市計画」序文)、との観点から重要な本ととらえ、少し紹介します。

 

ギリシアとペルシアが戦った「ペルシア戦争」。

「侵略されたギリシア側の資料が饒舌なのにたいし、侵略した側のペルシア由来の資料はこの戦争について語らない。この沈黙を、われわれはどのように理解すればよいのだろうか」(p132)。「そもそも、ペルシア戦争の勝利者は本当にギリシア側だったのだろうか」(p134)、「ひょっとしたら実際のペルシア人もギリシア遠征が成功したと信じていたのではなかろうか」(p135)と、ギリシア側にとっての“史実”だけに頼らず、さまざまなアプローチで「客観的な歴史的評価」に迫ろうとします。なかでも、「ギリシア人にとってのペルシア帝国、とりわけ頂点に立つペルシア大王は、ギリシアをはるかに凌駕する物質的豊かさを持った、ひそかなあこがれの対象でもあった」(p138)として、都市生活における「ペルシア趣味」の数々をあげていくところなどは、一番興味深いところです。「はるかに凌駕する物質的豊かさ」「ひそかなあこがれ」などという表現になっているところも、もう少し掘り下げるとさらによいのかもしれない。特に、「都市の進化」という観点からは。

 

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・ジュンディー・シャープール(グンデシャプール)

⇒『ペルシア帝国』(講談社現代新書2502、2020.8.20刊)等より

https://tkmzoo.hatenadiary.org/entry/2020/09/17/103250

 

 

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