「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定について」(12月21日公表)

12月21日に発表された「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定について」(内閣府)ですが、なぜ発表されたのか、どのような意味をもつ発表なのか、どこに注目すればよいのかわからないまま、「死者約20万人も」といった印象だけが記憶に残り、まだ4日しか経っていない12月25日には「過去のニュース」としてその記憶も既に薄れている自分がいます。

なんとなく気味の悪い地震が続き、今年のクリスマスプレゼント交換を防寒保温シートにした(皆で千円程度のものを交換し合うことにしている)くらい少々気を引き締めているこの頃、4日で「死者約20万人も」の記憶が薄れるのに抗うためにここで、12月21日のニュースが「なぜ発表されたのか、どのような意味をもつ発表なのか、どこに注目すればよいのか」につき整理してみます。

 

ここではまず、「10年以内30%以上」と予測される海溝型地震(ここではマグニチュード8以上)を、「今までに発表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(令和3年1月13日現在)」(⇒関連資料1)からひろってみると以下の2つです。

  • 「根室沖」7.8~8.5程度
  • 「南海トラフ」8~9クラス

12月21日の記事は「マグニチュード9級の巨大地震が起こった場合」としているので、上記「根室沖」というよりも、同じ資料に示されている「超巨大地震 マグニチュード8.8程度以上 10年以内確率2~10%,30年以内確率7~40%」のイメージに近いもので、千島海溝型と日本海溝型の2つが示されています。特に千島海溝型の場合の最大規模をマグニチュード9.3と想定。マグニチュード9.0だった2011年の東日本大震災をさらに上回るエネルギーです。

 

次に、なぜ2021年12月21日だったのか。

それは、昨年7月のWG設置にさかのぼります。その際の説明によれば、「中央防災会議では、東北地⽅太平洋沖地震の教訓を踏まえ、これまで南海トラフ地震、⾸都直下地震について最⼤クラスの地震・津波を想定した防災対策の検討を進めてきた。今般、⽇本海溝・千島海溝で想定すべき最⼤クラスの地震・津波の検討が進んだことから、これに対する被害想定、防災対策の検討を⾏うために、防災対策実⾏会議の下にワーキンググループを設置」したとされます。本年10月25日の第9回WGにて今回発表された報告書の案が検討され、12月21日発表の運びになった、というのが全体の流れです。1946年12月21日に(昭和)南海地震が起きていることから公表日をその日に合わせたとも。けれども感覚的にはむしろ「今年のクリスマスプレゼント交換を防寒保温シートにした」人がいる(←自分のこと)くらいのタイミングだったので、ニュースそのものに注目する国民は多かったと思われます。しかし残念ながら「4日しか経っていない12月25日には「過去のニュース」としてその記憶も既に薄れている」人がいる(←これも自分)ほどニュースはすぐに消費・消化されてしまうので、本ブログとしてはその意味をもう少し書いてみます。

 

そこで最後の「どこに注目すればよいのか」。

まず、関連資料2として、内閣府のURLのリンク先を下にあげます。このURLの「被害想定について」の部分が今回発表のオリジナル資料です。メディアでとりあげられているのは、これらのうち3番の【定量的な被害量】の具体的な数字です。なかでも今回ショッキングだったのは、「津波からのがれたとしても、冬の寒さで低体温症で」何万人もの人が亡くなる可能性があるとの数字でした。報告書では直接「亡くなる」とは書かれておらず、「低体温症要対処者数」のリスクを減らす必要性を強調したものです。「低体温症要対処者」の定義は、「津波から難を逃れた後、 屋外で長時間、寒冷状況にさらされることで低体温症により死亡のリスクが高まる者」とされます。これまであまり見たことのない北海道「ならでは」の被害想定ですが、想像するだけでおそろしくなります。

 

最後に。このWGですが、「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループにおいて、引き続き、 予防対策、応急対策、復旧・復興対策を含めた日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策の 全体像について検討を進めていく予定」とされます。

 

 

[関連資料]

1.「今までに発表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(政府 地震調査研究推進本部)

https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/ichiran.pdf

2.今回の被害想定関連資料(内閣府)

http://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/WG/index.html

 

 

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