‘アーバン・ベア問題(クマの市街地出没)’と都市計画

いつも楽しみにしている『UP』2022.1号が届いたのでペラペラめくっていると、「となりのヒグマ -アーバン・ベア問題とはなにか」という論説記事が出ていました。アーバン・ベア問題???

驚いたことに、近年の都市計画の成果によって(他にも要因があると考えられるがここでは都市計画に関連しているという驚きを強調してこのように表現する)、クマが緑の軸を伝って市街地へと誘導され、突然ショッピングセンターの駐車場に出没してしまう、といったこれまでになかった「事件」が増えていると。東京大学出版会から出版された『アーバン・ベア』(佐藤喜和)の解説的文章であるこの論説をよく読んでみると、なかなかおもしろいので以下、一部引用しつつ主観的に書きとめます。

 

「アーバン・ベア」はこれまでのような、山から出てきた里で農地を荒らされるといった人間にとっての困り事とは異なり、近年の多自然型河川や「緑の軸線」都市計画などによって市街地周辺の自然が市街地内部に食い込むようになってきた結果、山から谷へ、谷から河川へ、そして市街地へとクマが自然に誘われて出てきているという新しい現象のようです。「クマ側の視点に立って人の生活圏に出没する動機を考えると(p15)」、出てくるクマの多くは初夏の繁殖期に発生しており、食べ物を求めて出没するのではなく、親から独立した若いオスが出生地から離れて分散していく過程で、またはクマ社会の個体間関係から、新たな生息場所を求めて移動する途中に(p15)」緑地に入り込んでしまい、そこから突然街中に現れてしまう。こうした現象は「たんにクマの生息数増加や分布拡大だけによるものではなく、都市計画や河川管理計画の中で進められてきた自然保護を根底とした街づくりの結果としてもたらされている(p16-17)」。

以下、どのように対応していったらよいかについてもとても貴重な話が続きますが、最も印象に残ったp17-18の以下の一文を引用させていただき筆を置きます。

「まれな災害への備えと、日常生活の豊かさとを両立させるためにどのような選択が必要なのか、防災の取り組みを参考に、鳥獣や農林の部局だけでなく、都市計画や教育、観光など多様な部局横断で議論を始めるときがきたのではないだろうか。」

 

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