Town & Country Planning 2021年11/12月号にはもう１つ、「ending the lottery of design-based planning appeals」と題する重要そうな記事が出ています。ロンドン大学のカルモナ教授によるもので、長年の懸案だった都市計画におけるデザインの良し悪しに関する許可判断が、2021年7月20日に改訂された国の方針(NPPF=National Planning Policy Framework)によって実際に大きく転換しそうだ、との論説です。この記事だけでは具体的なNPPFの変化が見えないので、実際のNPPFの改訂前(2019版)と改定後(2021.7版)を比較しつつ、この記事のポイントを読み解きます。
当該箇所はNPPFの第12章「Achieving well-designed places」。改訂前(2019版)の9節が改定後(2021.7版)には11節と量的にも増えており質的にも大幅に書き換えられています。変化は、良いデザインの内容に関するものと、デザインコード等の策定プロセスに関するものがありますが、ここでは、特に直接的影響の大きい前者に絞って変更点を整理します。
第一。めざすものが「high quality buildings and places」と抽象的だった2019版に対し、2021版では「high quality, beautiful and sustainable buildings and places」となりました。「beautiful」をどのように判断するか興味が湧くところです。
第二。2019版では「permission should be refused for development of poor design」としていた箇所が「development that is not well designed should be refused」と変更されました。一見同じように見えますが、不許可すべき対象が「貧弱なデザイン」から「良好にデザインされていないもの」とレベルが上がり、カルモナ教授的には「平凡な(mediocre)デザイン」もその対象になりうると。(後述)
第三。同じ個所に関連して2019版では、デザイン的な面のみによって開発を不許可にすることはできない(他の政策との兼ね合いによって総合的に判断すべし)としていたものが、2021版ではストレートに「development that is not well designed should be refused」と書かれています。
なお、第四に、2021版では、131節に「climate change」の観点が新設されました。内容は緑化や既存の緑の維持保全などですが、「デザイン」にこうした現代的テーマも含めるものと理解します。
カルモナ教授の論説では、2021.7.20前後で実際の判断がどう変化したかを実証するべく、不許可を不服として申し立てられた案件に対して、インスペクター(国の立場)がどう判断を下したかを分析しています。関連が深そうな2021年の5件の判断が対象で、うち4件は2021年の前半、1件が後半。分析してみると、確かに前半4件では、デザイン面だけの理由というより密度の高さや他の政策的要素なども含めて判断がなされている。それに対し9月に判断されたロンドンのノース・フィンチリーの事例では以下のように新NPPFの方針を反映した判断により不服申立ては却下されている。少し長くなりますがそのまま原文で載せます。
「The Government has stated that the decision of new development is too often mediocre and that systematic change is needed to ensure that design and beauty is a core part of the planning process. The national design guide and reforms of the NPPF further place emphasis on granting permission for well-designed buildings and refusing it for poor quality schemes.」
まだ1事例でしかないので、どう展開するかは不透明ではあります。本当は、却下されたロンドンのノース・フィンチリーの事例がどのようなものだったか、その内容等に即してさらにどのような論理によって却下に至ったか、では、却下されたディベロッパーはそれに対してどのように対処しようとしているのかなどについてもじっくり見てみたいものです。
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