『TACTICAL URBANISM』

副題が「Short-term Action for Long-term Change」。ISLAND PRESS、2015。著者はMIKE LYDON & ANTHONY GARCIA。
学部授業「都市計画とまちづくり」で今年初めて「タクティカルアーバニズム(等)」をとりあげることになりました(7月20日の予定)。「都市計画とまちづくり」の前半はいわゆる「都市計画」の基本をとりあげるのに対して、後半は下図のような枠組みのもと、「上からの」「下からの」都市計画に加え「中間」にあたる部分にさまざまな都市計画要素が加わることによって都市計画全体にダイナミックな力が働くようになってきたといったストーリーとしています。

今や「タクティカルアーバニズム」の古典といってもよいこの本ですが、かなり前に購入して20頁ほど読み進めたところで放置していました。ある種、「タクティカルアーバニズム」=「あれネっ!」といった具合に、パラパラとこの本をめくると何度も出てくる「before」⇒「after」の写真でもってわかったような気分になっていたのかもしれません。
しかし最後まで読んでみるとなかなかおもしろく、いくつもの事例が上図の中身をより突っ込んで考える刺激となるなど、1つの記事として書いておかなければと思うに至りました。
ごく端的に、おもしろかった順に2つ書き留めておきます。

第一。第2章のいわば「タクティカルアーバニズムの歴史」は古今東西の過去の都市計画を「タクティカル的である」との視点からとりあげており、「タクティカル的である」ことを普遍的なものとして考えるきっかけになりそうです。例をあげると、異議申し立て。住民参加の方法。これらは現代都市計画そのものでもある。社会実験。これも実際の都市計画事業において「社会実験」と言わないまでも現場で工夫や改善を加え事業変更をたびたび行いながら実施されることと連続的につながっている。暫定都市計画。ローマ時代の「castra」からはじまるその話は、生活インフラだけ整備しておきあとは個々の成長に任せる都市計画の原点である。「ボンネルフ」の経緯と法制化。災害からの復興。まずは生きるための復旧からはじまり次第に形が整ってくる。この第2章だけでも学習教材になりそうです。

第二。やはり第4章の5つの事例。この本の約4割ほどの分量です。この本の著者が、「これぞタクティカルアーバニズムの原点」として精選したものなのでしょう。「5つの事例」というより、「5種類のタクティカル」。上図の三角形にあてはめてそれらの経緯を分析すると、「上から」「下から」「中間」のどこがどう作用して大きな流れになっていったか、その流れを推し進めた要因は何か、なぜそれが推し進め得たのか、などなど、「タクティカル」の世界がダイナミックに「見える化」できそうです。

[追記 2022.7.20 1事例目(ポートランド市における1996年の事例)を分析してみました。左の図にあてはめて、都市計画にどのようにダイナミックな力が加わったかを確認してみてください。]

 

Intersection repair : ポートランド市での物語

 

 

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