東京圏への人口移動はコロナ後にどうなっているか? (2019.8~2022.7)

2022年7月分の「住民基本台帳人口移動報告」が本日(8月30日)発表されました。

毎月ほぼ1か月遅れで発表されているので、「7月」というのは意味がありませんが、「新型コロナの影響」を確認するべく、3年分さかのぼって、東京圏(1都3県)に絞って表をつくってみました。

人口移動による東京圏の人口増加数(2019.8-2022.7)

 

実は、『Before/With コロナに生きる社会をみつめる』(ロギガ出版、2021.3刊)において、ごくわずかなデータをもとに以下のように論じていました。

「2020 年 8 月の住民基本台帳ベースの数字でみると、東京都からは 4,514 人の転出超過(転出が 32,038 人で前年同月より 16.7% 増加、転入が 27,524 人で 11.5% 減少)がみられたものの、1 都 3 県でまとめると転出超過は 459 人にとどまり(転出が 28,911人で前年同月より 5.8% 増加、転入が 28,452 人で 14% の減少)、1 都 3 県レベルでは出入りがほぼトントンになっている。東京都だけみると「地方転出」ストーリーにすぐ飛びつきそうになるとはいえ、もしこうした傾向が続くとすると見逃せない変化である。新型コロナの「第二波」が流行し始めた 2020 年 7 月 は、1 都 3 県からの転出超過が 7 年ぶりに起こった月とされるが、量的にみればまだ 1 都 3 県の人々は域内にとどまりつつ「新近郊」化を模索している、とみることができる。2020 年 9 月もこの傾向は大きく変わっていない。1 年前の 2019 年と比較していくと、1 都 3 県に地方から出てくるボリュームが減っているので、どちらかというと「弱い非首都圏集中傾向がみられる」というのが正確かもしれない。」(p274)

そろそろその検証をしなければと思ったのが今回の作業です。両者を突き合わせてみて、いくつか言えそうなことを整理してみます。

第一。(「新近郊化」が続いているかどうかのデータは今回示していないが、)7~9月の3か月間をみて「東京圏でみるとほぼトントン」という傾向は続いている。2020年は-1831人、2021年は-796。(2022年は7月のみで-270)

第二。正確にみるには今回の表のように年間を通してみなければならない。「8月から翌7月」の1年間を単位に3期間をみると、2019/20のプラス125361人が、20/21にプラス77956人と減少。これが最も低い値で、21/22にはプラス88564人とやや戻してきた。ただし大局的にみれば、東京圏には3月をピークに4月にかけて多くの人口を引き付ける。コロナ流行前(表の網掛け部分)にはそれ以外の月にもコンスタントに引き付けていた分が、コロナ後は消滅して、3月4月で集めた部分が「入超」の大部分を占め、そのような前提の中で、第一のように部分的に7~9月をみると「東京圏でみるとほぼトントン」だった。これは「5月から翌2月」くらいまでひろげても、ほぼそのような傾向が読み取れる。

第三。東京圏が年間を通して8万人前後を引き付けているというこの数字は、東京圏における自然減(出生数-死亡数)と、このところほぼ同じ数字になっている。つまり、「東京圏の人口は、地方から主として3月4月に人口を引き付けることで自然減少分を補って、結果として人口総数が変わらない」傾向がコロナ下で継続している。(他地域では人口移動により人口が減少するのに加え、自然減によってさらに人口が減少している。)

 

ということで、本日公表された2022.7月分の移動人口までのデータを見る限りでは、東京圏の人口は大きく減少する気配は無く、逆に、コロナ前のように大きく増加する気配もあるとまでは言えない。(以下は推論だが)圏域としての人口を保ちつつ、徐々に東京郊外へと向かう「新近郊化」が継続している。

 

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