『京都の中世史(1)~(7)』から見える京都の都市形成史、日本の都市史(研究)の新次元 (京都と都市イノベーション(その10))

2023.1.1を発行日とする第7巻がついに発刊されました。第1~6巻に対して何が加わるのかについて、手に取るまで全く情報が無く、11月頃になって、12月末に出ることがわかり待ちに待った第7巻です。
山田邦和著、吉川弘文館発行。

この第7巻。あるいは第1~6巻に対する第7巻の位置付け。とてもイノベーティブです。引用すると、「本来ならばそれぞれの巻で文献史学と考古学の成果を対等に扱うことが望ましいのであろうが、両者の方法論の違いを考えるならば現実的ではない 」(p.4)。ということで、第1~6巻が編年体で文献史学の立場から編まれたものを、この第7巻で考古学の成果を通史的に結びつけて全体を統合する、という形の、今まで見たことのない「まとめ」の巻になっていたのでした。


この驚きと発見を書こうとすると長くなりそうなので、トピック的にごく短く綴ります。

第一。『鎌倉殿の13人』の最後に後鳥羽上皇が京を追われたことを例にあげるとすると、本書では「水無瀬殿」(JR水無瀬駅付近)復元図を示し(p.139)、それを「中世京都「巨大都市複合体」の展開」(第3章6節)の最初の事例にしています。2つ目の「亀山殿」の中世都市嵯峨の都市計画が、鎌倉幕府のそれと同規模かつ形態も似ていたとの見立てには驚きました。

第二。天皇や上皇などが離宮を郊外につくるたびに「京都」が拡大していくさまが平安後期から鎌倉、室町時代を通して復元図付きで積み重ねられていく。その精度が高く、それは文献だけでなく考古学の成果を踏まえているからと考えられる。都市計画学が求める精度があり、驚かされます。

第三。2024年のNHK大河ドラマは『光る君へ』(←源氏物語)のようですが、「平安京の右京は寂れていたんだって?」というこれまでアバウトにしかわからなかった右京の状態についても、具体的な邸宅の発掘成果等が積み重ねられ、精緻な図面が示され、理解がグッと進む。「最初都市計画された「平安宮」も、里内裏が一般化して崩れていった(機能分散しスカスカになっていった)んだってね」という点も同様。

第四。第一~第三の成果により、「今」の京都が、それぞれの場所が、どのような歴史的蓄積によるものなのかが理解できる。「できる」までは無理な場合も、参照ポイントが豊富化して次への手掛かりとなる。

第五。このことは、「その場所の理解」にとどまらず、「その頃の京都」「その頃の日本」「その頃の世界」を読み解く手掛かりになる。


第七巻の完成により本シリーズが完結しました。感謝、感謝です。

 

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【In evolution】日本の都市と都市計画
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