ロンドンOxford Streetに建つ歴史的建造物の再開発計画が大臣により却下されました

地元Westminster区も、ロンドン市長も、インスペクターも揃って「可」とした再開発計画に対し、大臣が「否」とする通知を出し(2023.7.20。⇒資料)、大きな話題になっています。

対象となる建物はロンドンの繁華街Oxford Streetに面して建つ(主要なファサードはクロスするOrchard Street側)アールデコ様式の建物で、流通大手のマークス&スペンサーが入っています。
却下されたとはいえ、不服申立ての機会もあるので、どのようになるかまだ結果はわかりません。
以下のようにこの事例はとても注目されるため、まずは注目点のみ示し、これからフォローしていきたいと思います。

第一。最も目立つ繁華街の誰もが知っている建物の再開発の可否が問われているという単純な理由です。
第二。その建物がアールデコ様式のもので、その歴史的重要性から多くの団体や建築家などから計画を「否」とすべきとの声があがっていたことです。

第三。実質的に開発を審査する地元Westminster区(ロンドン市長もその判断を支持している)がどのような判断で「可」としたかをよく知りたい。
第四。その「可」の判断に対して大臣が命令により公開審問の開催を要求。専門家が「インスペクター」に任命されて精査した結果も「可」となった。その理由。
第五。地元区、ロンドン市長、インスペクターの三者がすべて「可」だったものを覆した大臣の判断理由が知りたい。イギリスメディアでは、単に歴史的文脈の重視ということを超えて、2050年にゼロカーボンをめざす国策(というよりグローバルな目標)に反することが特にとりあげられており、どのような論理や重みづけによって、他にも多数あるはずの「可」となる重みよりも「否」とする側に判断したかという論理的・政治的・経済的・社会的意味を確認したい。

 

ほかにも知りたいことはいろいろありますが、まだ「これから」もあるかもしれないため、とりあえずは論点だけ出しておき、少しずつ事の本質に迫っていきたいと思います。
他国の出来事ではありますが、自らの課題でもあるととらえて。

 

 

[資料] 大臣の「否」を告げる決定通知書(インスペクター報告書付き)

https://www.gov.uk/government/publications/called-in-decision-456-472-oxford-street-london-w1-ref-3301508-20-july-2023