「Street vote development orders」に関する協議

昨年成立したLevelling-up and Regeneration Act(レベルアップおよび再生法)の中に、街路単位で将来可能な開発の内容を決められる「Street vote」という条項があり、その具体化に向けた協議が行われています(⇒資料)。2023年12月22日に公表され、2024年2月2日にいわゆるパブコメが終了しました。

これまでの都市計画の枠を破って街路単位で物事が決められるとなると、乱開発になるのではないかなどの危惧が当初よりあり(⇒関連記事)、制度技術的な政府の方針がはじめて示されたものです。「street vote development order」というのは日本的にいうと街路レベルで予めゾーニングのように可能な開発を決めておくツールで、今回の協議はそのようなオーダーを決めるための規則の方向性を政府が問いかける形で示し、各方面からの意見を求めるものでした。制度としてはかなり細かな点に及ぶため、ごく基本的な点のみ紹介します。

第一。「街路」といった場合それをどうやって定義するかについては、「street area」を定めるものとし、その細かな空間的決め方などが示されました。(Q11,12に対応)

第二。誰がそれを言いだすかについては、近隣計画の場合もそうだったように、「qualifying group」(近隣計画ではqualifying body)を決めます。では何人集まればよいのでしょう、というと、10軒以上ないとダメで、10軒の住宅不動産で構成されるエリアでは100%加わる必要がある。12軒では90%以上、、、20軒の場合は50%以上、、、と徐々に変化し、25軒では25%以上となる。(さらに細かな部分は省略)

第三。設立されたグループで、いろいろな基準等に従って「street vote development order」を作成し提案する。

第四。計画審査庁によりそれは審査され、OKとなったら当該エリアでレファレンダム(投票)を行う。

第五。承認されるためには、支持割合が少なくとも投票可能者の60%必要。この先はオプションで、1人以上が賛成している世帯が少なくとも半数以上必要。ややこしいのですが、たとえば開発を望まない単身老人世帯がたくさん反対しているのに、投票権をもつ少数の多人数世帯が皆賛成となると60%は超えているけれどよろしくない、といったことを防ぐために考えられたものだと思います。オプションの方を条件とするかどうかは地方自治体の裁量に任せる、というのが原案です。(Q45,46に対応)

 

けっこう複雑な手続きですが、そもそもこうした規定など必要ないと考える立場もあり、協議結果も知りたいところです。1つ事例として、RTPI(王立都市計画協会)がどのような意見を出したかを第五点目だけみてみると、「最低60%以上必要」には「賛成(agree)」。後半のややこしいオプションには「ノーコメント」でした。

 

これだけ見ていても都市計画界の大きな反応はわからないので、最新のTown and Country Planning誌(2024.1/2月号)の「a planning revolution under the rader」(p12-16)を見てみます。Tim Marshall教授によるこの論説の趣旨は、タイトルにあるように、それとわからないところで(under the rader)都市計画の革命が進行している(つまりネオリベラリズムによる大幅な規制緩和が行われている)というもので、現在の保守党政権には批判的(そもそもこのジャーナル自体がそうした傾向)。その中で、2024年中に行われる総選挙で労働党が勝利した場合の都市計画制度はどうなるかが予想されています。最後のほうで少し触れている程度の、「想像」に近いものなのですが、デジタル化やデザイン重視の政策は止まらないとみています。近隣計画も受け継がれるだろう。それに対して「street vote」も含む超ローカルなイノベーションについてはあまり確かでない、と書かれています。(より重要視していることもこのあと続きますが、ここでは省略。)

 

さて、今回の協議を踏まえた「規則」はどのようなところに着地するでしょうか。また、一旦着地した「street vote」は本当に有用なものとして使われるのでしょうか。

 

[資料]

Street vote development orders - GOV.UK (www.gov.uk)

 

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下院段階の法案がほぼ固まったようです : 「Street vote」に着目して

 

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