大きな社会(Big Society)とローカリズム法案(Localism Bill)の行方

本日から新シリーズ「イギリス都市計画定点観測」をスタートします。気になる、あるいは重要そうな動きを、できるだけ深くかつ簡潔にウォッチします。不定期です。初回は、今回の都市暴動とも関係しそうな議論。
昨年誕生した保守連立政権は「大きな社会」を掲げ、近隣レベルに都市計画権限をおろすべく、現在、ローカリズム法案が国会で審議されています。直接民主主義的でいいじゃないか、と一般には考えられるかもしれませんが、Town & Country Planningの7+8月号(314-317)にP.Allmendinger教授らによる批判的論考が簡潔にまとめられているので4つのポイントを紹介します。1)複雑な社会だからこそ多様なステークホルダーのチェックを受けて中央で議論し決定しているのに、ローカル化を進めすぎると分割され、そうした声が反映しづらくなるおそれがある、2)代議制にも問題はあるとしても、直接民主主義を強めると力のあるところのみメリットを享受し、それ以外は中央の財源カットの格好の材料になる、3)ユビキタスローカリズムでなく選別的なローカリズムが進み近隣間の分裂が進むおそれがある、4)「大きな社会」とは聞こえはよいが、結局は保守党が常に掲げる「小さな政府」のための方便にすぎない。