アメリカ都市計画の誕生

ジョン A. ピーターソン著(2003)、兼田敏之訳、鹿島出版会2011.12.30刊。
本のタイトルは「The Birth of City Planning in the United States, 1840-1917」ですが、訳者が残念がるようにこの日本語訳は1910年にアメリカ都市計画が「誕生」したところで終っています。誕生したんだからいいじゃないかというと、それはとても残念で、「第五部 実行可能性の問題」こそが本当に重要な部分といえる部分です。つまり、確かにいろいろな流れが「プラン」として統合・総合されるようになったという点で1910年に「誕生」といえなくもないのですが、それはあくまでも「プラン」としての話。
全体が翻訳されなかったことは、本当に残念です。というのも、1910年までの部分ではかなり突っ込んで建築家の役割やエンジニアの役割、政治家の役割などが豊富な具体例とともにしっかりと語られていて、興味が尽きません。
実は、現在のニューアーバニズム運動を100年前のこのような「誕生」の流れを踏まえて考えると、「歴史は進化する」ことや、100年前の都市化(アーバニズム)に対する今回のアーバニズムの共通点や相違点などを、かなり明確に、しかも技術的にとらえることが可能なような気がしてきます。それにチャレンジした優れた1つの例が第20話の『New Urbanism & American Planning』でした。
ジェイコブズの『アメリカ大都市の死と生』が全訳されるまで約50年もかかりました。是非、この原著の残りの部分が早く日本語訳になることを望みます。