アジアからみる日本都市史

国立歴史民俗博物館・玉井哲雄編、山川出版社、2013.3.10刊。
日本の都市の成立やその進化過程を、アジアの文脈で位置づけようとする最新の成果。
「唐の長安に学んで日本に平城京平安京をつくりました」との素朴な理解をはるかに超えて、古代世界システムの中での唐を中心とする都城の形成が「チベット高原を統一した吐蕃モンゴル高原ウイグル、中国大陸西南部の南詔中国東北部渤海朝鮮半島新羅、日本列島の政権が相次いで樹立され、長安に対抗する都城を建造して唐と外交関係を築き、国家の安定と維持をはかった」「都城の建造・整備は、貢納と外交のための行政都市網の構築と整備を必然とするところである」(p55)としたうえ、58〜59頁にはこの時期に建造された各地の都城のレイアウトが、62〜63頁には当時の交通網が、最新の研究成果を踏まえてかなり詳細に示されています。
古代の都城システムが精度高く描けているのに対して、「13世紀から18世紀にかけての東アジアは、政権の相対的な安定と経済の進展にともない、各国が独自の伝統に根ざす国家をつくり」(p57)とする点〜たとえば、日本の城下町という独自のシステムに関するアジア的文脈も踏まえた新たな研究成果〜については、まだまだ仮説段階(一部“想像”も含む)という印象があります。本書が「中世都市研究会」による出版物ということを考えると、まさにこの時代の研究が進行中なのでしょう。たとえば、モンゴルが強大な勢力を持っていた頃、元の都として大都(現在の北京)をつくるまでの展開を論じた「13世紀中国大陸における都城構造の転換−カラコルムから元の大都へ」などはワクワクする内容で、今後の研究成果を期待したいと思います。

[関連]第80話第79話