神宮外苑

「外苑とは、その計画段階から完成後、いや現在にいたるまで、相反するような構想や実現しなかったアイデアも含めて、さまざまな要素をその内に飲み込み続ける、まるでブラックホールのような場でもあるといえよう」というのが、今泉宜子著『明治神宮「伝統」を創った大プロジェクト』(新潮選書2013.2.20刊)第3章「都市のモニュメント」p202-203に示された外苑像。内苑が官費で短期間に造営されたのに対し、外苑は国民から資金を募って民間発意で時間もかかってつくられたことなどが語られるこの図書は、なかなかおもしろいです。
そもそもこの本を読むきっかけになったのが、JIAマガジンNo295(日本建築家協会2013.8発行)に掲載された槇文彦氏の特別寄稿「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」(⇒JIAマガジンNo295のURLは、こちら。この号の10-15頁です)。[2024.3.7追記。この記事は読めなくなっているため、代わりに、長谷川建築デザインオフィスのHP上で公開されているコンテンツにリンクさせていただきます。]
そこで紹介されていたこの図書には、明治神宮内苑・外苑、表参道・裏参道(・西参道)が全体として織りなすことになる新しい都市づくりへの軌跡が詳細に、しかしもっと知ろうとすると適度に飛び飛びに語られているため、「それで、どうなったの?」との好奇心が次々に生まれてきます。
特に、内苑と外苑を結ぶ「内苑外苑連絡道路(裏参道)」については、表参道の構想の変遷とともに何時点かの地図入りで解説され、それだけでも興味が尽きません。この「内苑外苑連絡道路」。1つ前の記事で取り上げた首都高速道路によりほとんどその面影がわからなくなっていますが、先日、国立競技場付近から明治神宮北門までをウォッチし、その姿を想像しました。4つ前の記事の新宿御苑との関係(関係のなさ)もかなり気になります。
東京都心部に民間発意でつくられたこの空間および周囲との接続を、歴史の重みに敬意を表しつつ、2020年に向けてどのようにしたらよいのか。「相反するような構想や実現しなかったアイデアも含めて、さまざまな要素をその内に飲み込み」ながらより良き空間に進化することを願います。