ACV(Asset of Community Value)の話

Planning2013.11.1号の表紙を飾った、何やらパブの前でうれしそうにビールを手にする10名ほどの男女。後ろの建物には「SAVE OUR PUB」の文字が、、、
Localism Actにはこんなシカケもあるのかと驚く内容です。2011年に成立したこの法律のPart5第3章には「Asset of Community Value」を規定していて、コミュニティが大切にしているパブなどの財産を「財産(asset)」として登録することを地方自治体が認めることができます。この号の論説(p3)によれば法施行の最初の10か月で500を超えるassetが登録されたとのこと。登録されると、民間の開発申請が出た際に、その計画を許可すべきかどうかの判断の中で考慮すべき材料となり、たとえば利用されなくなったパブがマンション業者に売却されようとした場合、コミュニティで買い取れないかを6週間の猶予をもって検討する機会が与えられるなどの規定です。この11月1日の記事は、それじゃ困るとパブのオーナーが登録を覆そうとロンドンハックニー区に異議を申立てたものの、その適否を審査する第三者機関により申立てが却下されたことを論じたりその背景を解説した内容となっています。表紙の写真はこの結果を象徴する地域での盛り上がりの様子を示すものでした。なかなかおもしろいシカケです。
そのような目で見てみると、2013.10.18号にもACV関係の記事が(p9)。こちらはコミュニティが大切にしているbowls club(よく街で見かける芝生のボーリング場)を登録したことに対してデベロッパーがその見直しを求めています。正確にいうと、登録の範囲が敷地全体でよいのかどうかをめぐってもめているようです。p9に出ている現場写真をみると、なかなかイギリス風で個性的な場所のようです。ややのめりこみそうです。

[追記:雑誌Planningの2013.11.15号に、ACVを使ってコミュニティの力で地元パブを再生させた第1号(と思われる)事例が出ています(p36-37)。ディベロッパーに売却されそうになったパブでしたが、グレード2の登録建物(English Heritage)となり、さらに地元ロンドンサザク区の迅速な判断でACVとして登録。地元でパブ運営会社を立ち上げ、55万ポンドのローン(Architectual Heritage Fundによる)と45万ポンドの助成金(ACVを支援するための政府ファンドによる)などにより、パブ所有者から81万ポンドでパブを買い取ったとのこと。専門家のコメントでは、「今回の事例がすぐにモデルとしてイギリス中に広がるとは思えませんが、地域にいる専門家がそれぞれの専門性を発揮し、リアルに自分たちの能力を把握しつつ商業的運営を行うつもりで行動することが大切」とのこと。]

[参考]本ブログのイギリス最新都市計画「★統合ファイル