わが街再生 コミュニティ文化の新潮流

小さな、しかしそれらが地域に多数起こり連携するとジワジワと大きなパワーになる可能性のある国内の街再生の最新動向を現場から綴った好著。平凡社新書2013.10.15刊(著者は鈴木嘉一)の図書を今回とりあげます。
コミュニティFM(東日本大震災でも多数設立)、コミュニティシネマ(シネコン以外では地方から無くなりつつある映画館再生の話)、フィルムコミッション(単なる調整役だけでなく地域の新産業を指向する動きも)、芝居小屋復興(有名な事例から説き起こし南相馬市の朝日座や小浜市の旭座についても言及)、産業観光の5つのパートからなります。これまで、これらの1つずつを扱った図書は出ていますが、これだけまとめて「コミュニティ文化の新潮流」という概念を付して解説した点が出色です。
「私は新聞社を離れた今も、心のなかでは新聞記者のつもりでいる」と結ばれている「あとがき」からわかるように、足でかせいだ現場情報やキーパーソン情報が満載であるほか、成長企業による地域支援や法制度のしがらみ(の段階的打破)などが随所で語られており、単なる事例紹介を超えた何かを訴えかけてきます。また、「元」大企業社員などだった普通の人たちが故郷でその専門性や人脈を活かして地域貢献したり、海外で果たそうとした夢を日本でも果たせることに気づいた若者が主人公だったりと、「右肩下がり」の日本に希望を与える図書でもあると思います。

などと書いていて、3つ前の記事「Asset of Community Value」とも関連ありそうだと思いwikipediaを調べてみました。「500件以上」にも達している“コミュニティ財産”のうち100件以上は「パブ」だとのこと(ガーディアン紙による登録パブ地図マップもついている)。その他にはスポーツクラブや公園など。香川選手が活躍するマンチェスターユナイテッドの本拠地オールドトラフォードスタジアムも登録されているとか。

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