MEASURING WELLBEING

国ごとの「幸福度」指標などについては多くの研究が進み、先週発売された『世界』2014.3号でも「脱成長時代の新しい発展パラダイム」(西川潤、82-96)の中でOECDのwell-being指標とブータンのGNHが解説されています。
しかし都市レベルとなると、1)新しいパラダイムも含めた先進的な指標(群)を、2)都市レベルで、3)実際に活用する、という3つの高いハードルがあり、研究はなされてもなかなか実用化には至りません。
『MEASURING WELLBEING』(Karen Scott著、Routledge、2012刊)は、ニューカッスル郊外の1つの町をケースに(上記条件2))、現代的な持続可能性を踏まえた指標を(上記条件1))、実際にその町の政策に活用しようと格闘した(上記条件3))成果をつづった図書です。実際にはその後に出た「Trying to measure local well-being」(Environment and Planning C、Vol.31、522-539、2013)を読み、現場で格闘する等身大の姿に共感しました。その町で指標の意義に共感してくれたのは環境セクションの特定のスタッフだけで、町の政治の中枢にいる人たちはいまだ成長志向。格闘の末、最後にはその中枢の人が一定の意義を認めてくれた、というようには書かれていますが、「一定の意義を認めてくれた」レベルから「実際に活用する」までの道のりはとても長くまがりくねったものと予想されます。
そもそも条件1)で本当に有効な指標かどうかが問われ、条件2)でその「都市で」有効かどうかが問われ、条件3)で実際に使えるかどうかが問われるこの取り組み。まだチャレンジははじまったばかりです。